鉄スクラップの価格が、すさまじい勢いで暴落している。鉄鋼メーカーやスクラップ業者などを会員にもつ日本鉄源協会が2008年11月12日に明らかにした関東、中部、関西の3地区の鉄スクラップの平均価格は、1トンあたり9538円だった。7月には、地域によっては7万円台を付けていた。世界的に景気が一気に冷え込んだのが原因だが、スクラップ業者は、「ここまで下がるとは、誰も予想していなかったし、あまりに急なことで手の打ちようがない」とお手上げ状態だ。
「いまだかつて、誰も経験したことのない暴落」
日本鉄源協会のモニター調査(毎週月曜日時点)によると、鉄スクラップの関東地区の価格は1トンあたり9167円、中部地区は9380円、関西地区は1万67円だった。関東地区は9000円をも割り込んでしまいそうな勢いだ。
10月の関東地区だけをみても、第1週に4万円を付けていた価格は第4週に1万4000円まで下落。1か月に2万6000円も下がり、11月に入ってもまだ止まらない。
「それはもう、業者は大変ですよ。目前の山積みされた鉄の価格が1日1日下がっていくのですから」――日本鉄源協会の関係者はため息をつく。「鉄スクラップの価格は相場で決まるので、どの業者もある程度の変動は覚悟しています。しかし今度ばかりは、あまりに急激な変動、しかも下げ幅が大きかったので(経営への)影響が厳しくなったといえます」という。
日本鉄リサイクル工業会の関係者も、「いまだかつて、誰も経験したことのない暴落となった」と話す。
背景には、9月のリーマン・ショックをきっかけにした金融危機と信用収縮によって、世界的に景気が一気に冷え込んだことにある。鉄鋼需要を抑えていた中国が8月の北京五輪以降に持ち直すとの楽観的な見方があったが、それも金融危機などで吹っ飛び、韓国向けの輸出も円高ウォン安の影響で滞りぎみだ。
日本鉄源協会は、「需給バランスが崩れてしまった。自動車メーカーの業績悪化もありますが、住宅着工が減り、輸出も低迷と、多くの要素がからみあった」と、悪条件が重なったとしている。
そろそろ底入れのときか?
国内では、鉄スクラップの購入する製鉄メーカーなどが在庫は抱えたくない思いから、「これまでの半分でいい」とか、「今日はいらない」とか、入荷制限をはじめたことが鉄スクラップ業者を苦しめている。
鉄スクラップ業者の多くは、輸送費がかからない「地場」に根ざしている。鉄スクラップを持ち込む納入業者を決めているので、「納入を断わられると、集めた鉄屑の持って行き場がなくなる」(スクラップ業者)ということになる。それを、新たな納入業者や輸出業者の開拓や、少しでも高値で買い取ってくれるメーカーなどに持ち込むことで、じっと耐えているようだ。
回復の兆しがないわけではない。関東地方の鉄スクラップ事業者団体の関東鉄源協同組合が11月12日に行った共同輸出入札では、17社のうち14社が応札し、2トンの鉄スクラップに3社、平均1万4163円の価格を付けて落札した。10日に付けた9167円より、5000円ほど上昇。関係者のあいだでは、「これで底を打ってくれればいいが」との声が漏れた。
関西地区では、製鉄メーカーが買い取り価格を上げたという。「1か月先のことも予測がつかない状況だが、ここまで価格が下がると、流通量が減る。そこで需給関係が改善されて上がっていってくれれば…」(前出のスクラップ業者)と期待する。