ハリウッドの大手映画会社すべてが、韓国でのDVD事業から撤退することになった。韓国では、ネット上の海賊版の流通が深刻化し、04年ごろからDVD市場が縮小。そのあおりをうけて、06年ごろから撤退が相次いでいた。韓国は「ブロードバンド大国」とも言われる一方、それが裏目に出た形だ。
2人に1人が、週に1本のペースで映画を違法ダウンロード
ハリウッドの映画会社大手ワーナー・ブラザーズの韓国でのビデオ・DVD販売部門「ワーナーホームビデオコリア」は08年11月10日、12月31日で事業撤退する、と発表した。海賊版がネット上に横行し、DVDの売り上げが落ち込むなどして、事実上「市場崩壊」に陥ったのが原因だ。
韓国のビデオソフト業界では、90年代に入って、ソニー、パラマウント、20世紀フォックス、ユニバーサルなどが相次いで参入。03年には市場規模が1000億ウォン(72億円)にまで拡大したが、その後は縮小。07年の推計では569億ウォン(41億円)にまで落ち込んだ。これを受け、06年から各社の撤退が続いていた。
ワーナーは1999年に参入し、サムスン電子と協力関係を結ぶなどして、韓国のホームビデオ・DVD市場では最大のシェアを獲得。ハリウッド勢では唯一韓国で市場展開を続けてきたが、ついに音をあげたかたちだ。09年以降は、同社が扱っていた作品は、韓国国内の代理店経由で販売される予定だ。
韓国では全世帯の94%以上でブロードバンド接続が可能だとされ、それにともなって違法コンテンツの流通も深刻化している。韓国映画振興委員会(KOFIC)が07年に調査会社に委託して調査したところによると、韓国国民のうち、およそ2人に1人が、週に1本のペースで映画を違法ダウンロードしていることが判明している。「ダウンロードしたことがない」と回答した人でも、その理由で最も多いのは「複雑だから」(28.0%)。「著作権侵害への懸念」と回答したのは12.0%にとどまっており、規範意識の希薄さが浮き彫りになっている。
日本も韓国の二の舞になる?
ワーナーは、07年には、最大民放局MBCの関連会社と組んでダウンロードサービスを開始するなど新たな収入源を開拓したい考えだが、現状を踏まえると、合法なダウンロードサービスがビジネスとして成立するかは未知数だ。
ひるがえって日本のDVD業界を見てみても、どちらかと言えば縮小傾向だ。日本映像ソフト協会(JVA)が08年9月に発表した08年上半期(1月~6月)のビデオソフト(ブルーレイなどを含む)の売り上げは、前年同期比で5.1%減の1445億9100万円。動画共有サイトの影響を指摘する声も根強い。
ただし、08年3月には「ニコニコ動画」が、著作権を侵害しているテレビ番組の動画をすべて削除する方針をテレビ各社に伝えるなどの対策が進んでもいる。日本が韓国の二の舞になるかどうか、不透明な情勢だ。