日本でも有名な中国出身女優、コン・リーさん(43)に、思わぬ逆風が吹いている。コンさんは、シンガポールの国籍取得が報じられたばかりだが、中国国籍を放棄することになり、中国のネットユーザーが「裏切り者」「新作を見るのはボイコットしよう」などと猛反発しているのだ。バッシングは中国国籍を放棄したほかの有名人にまで広がる勢いだ。
中国ポータルサイトには、批判する声が相次ぐ
「ストレーツ・タイムズ」などシンガポール紙がコンさんの国籍取得を報じた
コン・リーさんは中国・遼寧省生まれ。日本では「さらば、わが愛/覇王別姫」「王妃の紋章」などの作品で知られ、05年には「SAYURI」でハリウッドデビュー。世界的に知名度の高い中国女優のひとりだ。
コンさんは1996年に香港在住のシンガポール人タバコ商(57)と結婚。08年になってからシンガポール国籍(市民権)を申請していた。
ところがこの後、2度にわたって逆風に見舞われることになった。コンさんは、08年8月に行われた国籍授与式を、映画撮影のスケジュールの都合で欠席。これに対して、一部からは「シンガポールに対する敬意を欠いているのでは」などと批判の声があがった。
結局、コンさんは11月8日の式典に出席。シンガポールの主要英字紙「ストレーツ・タイムズ」が11月10日、「コン・リーがシンガポール人に」との見出しをかかげ、コンさんが国籍取得の宣誓をする写真を掲載した。式典では、この他にも149人がシンガポール国籍を得たという。
シンガポール・中国の両国は二重国籍を認めていないため、コンさんは中国国籍を放棄することになる。これに対して、中国国内で反発の声があがっている。前出の「ストレーツ・タイムズ」を経営する「シンガポール・プレス・ホールディングス」が運営するニュースサイト「アジアワン」が報じたところによると、中国国内の各ポータルサイトには、コンさんを批判する声が相次いでいる。
「外国の市民権の何がすごいの?」
具体的には
「ニセ中国人」「裏切り者」「外国の市民権の何がすごいの?コン・リーはボイコットしよう」
といった声が寄せられているという。
特に、大手ポータルサイト「搜狐」が、コンさんの国籍取得について意見を募ったところ、否定的な意見が1000近く寄せられたのに対して、「決断を尊重する」といった肯定的な意見は5以下にとどまった。
ブログでは、掲示板とは様相が異なり、「コン・リーがシンガポール国籍を選んだ理由」について推測する書き込みが増えているという。「夫がシンガポール人だから」「シンガポール在住の祖父母の面倒を見るため」「シンガポールという、国際的にアピールができる場所でキャリアアップを狙っている」などと様々な憶測が広がっているが、コンさん側は特に国籍取得について説明していないため、今のところ真相は藪の中だ。
「アジアワン」の記事では、
「06年中ごろから、中国国籍を放棄した有名人10人以上のリストがネット上に出現し、それ以来、嵐が起こっている」
と指摘した上で、米国籍やカナダ籍を取得した中国の映画監督や俳優の名前を列挙。
シンガポールでは有能な人材を移民として受け入れる政策を進めていることもあり、中国のネットユーザーの閉鎖性を遠まわしに批判した形だ。