「タスポ」の普及率が32%あまりに留まり、設置した自販機の売上げもガタ落ちしている。その一方で、タスポ以外の認証システムをつくっている会社は好調だ。顔認証システムを搭載した自販機メーカーは売上げが前年比1.5倍に、免許証対応の装置の製造販売会社は3か月間で数年間分を売り上げている、といった具合だ。
顔認証タイプの売上げはタスポの3倍
2008年7月から、たばこの自動販売機に成人識別機能をつけることが義務付けられた。これにあわせて、タスポ対応機は同月から全国で使用できるようになった。ところが11月1日現在、タスポカードの普及率は喫煙者の32%あまり。自販機の売上げはガタ落ちし、客がコンビニに流れて、たばこの隣においているジュースの自販機も利用者が減っているという。「タスポじゃ、だめだ」というたばこ店が増え、別の認証機に切り替える動きが出てきた。
財務省が成人識別機能として認定しているのは、タスポのほかに顔の特徴を読み取り識別する「顔認証システム」と、免許証対応の装置システム。
新たに顔認証システム搭載機を購入したという「大磯酒店」(鹿児島県)の店主はこう語る。
「メーカーから借りている3台にタスポの読み取り機がつけられることを知って、正直、客が減ると思ました。タスポは利用者が色々と手続きをしなければならず、手間がかかる。長く店を使ってもらっている愛煙家には受け入れられません。初期投資はかかりましたが、顔認証タイプの売上げはタスポの3倍ですよ」
タスポが不調の一方で、元気がいいのは自販機メーカーだ。
顔認証機を搭載したたばこ自販機を販売するフジタカ(京都)の営業企画担当者は、
「全国から注文が来ていて、この数か月は売上げが前年に比べて約1.5倍に伸びています」
と明かす。
高くても「それで売上げが伸びるなら」
自販機のカメラで顔を撮影し、目、鼻、口、骨格から特徴を読み込む仕組みで、成人と判断されればそのまま購入できる。判別がつかない場合は、運転免許証を挿入しなければならない。
価格は110万円前後で、同社製のタスポ搭載機よりも3割ほど高いが、たばこ店は「それでも売上げが伸びるなら」と考え、購入するそうだ。これまでに6500台が売れた。
松村エンジニアリング(東京)は、自販機につけられる免許証対応の装置を製造販売している。販売店が所有する自販機に取り付けられる。このタイプの利点は、古くから使っている自販機にも取り付けられることだ。価格は工事費込みでおよそ18万円。
同社は10年前から免許証対応の装置をつくっていて、成人向け雑誌や、酒の自販機に搭載されている。広報担当者は、
「そのころは数年で100~200台出ればいい方でしたが、たばこ用は3か月で650台以上と大幅に伸びていて、一時は生産が追いつかなかったほどです」
と驚きを語った。