人生の終わりが見えた時、仕事に生きがいを見出す
前出の調査でリーダーを務め、NPO法人「HOPEプロジェクト」の理事長である桜井さんは、
「人生の終わりが見えた時、仕事に生きがいを見出す人は多いのです。治療後に再発し、つらい心境にある人ほどその傾向にあります。働き盛りの人にとって、仕事はこれまで生きてきた証で、最後まで成し遂げたいと思うようです」
と指摘する。
もちろん、経済的な事情もある。がんの摘出手術は100万円以上かかると言われている。国内で未承認だが海外で効果が認められている治療薬を使うには、全額自己負担になる。それに加えて生活費、住宅ローンの返済、子供の養育費など、生きていくのにかかる費用がもろもろあり、働かざるを得ないとも言える。
ところが現実には、雇用主の理解を得られず、依願退職したり、解雇されたりする人もいる。
「働きたいと望む人が、がんを理由に仕事を奪われたら、精神的に相当大きなダメージとなります。育児休暇があるように、治療休暇を設けるなど、せめて5年程度、支援してもらえたら…」
現代日本で、2~3人に1人が、がんになると言われ、20歳~40歳代のがん患者は15~20%存在する。企業にとっても経験を積んだ人材を失うのは痛手だ。治療をしながら働ける職場環境や休暇制度を企業は積極的に導入する必要があるのではないか。