突然倒産した自動車教習所の女性社長に、一部受講生らが土下座させた上、罵声を浴びせ続ける。そんな動画がユーチューブなどに投稿され、コメントが相次ぐ騒ぎになっている。その多くは受講生らに批判的で、ミクシィに書いた無免許運転告白なども暴かれるケースさえ出た。
受講生らが社長に土下座などを求める
まるで言葉によるリンチを受けているような光景だった。
「顔上げろ!」
倒産で返金が難しいことを土下座して謝る東京・八王子自動車教習所の女性社長に、一部受講生らが詰め寄る。床を激しく叩いて威嚇したあと、受講生の1人が社長を引っ張り起こした。
日野市民会館で2008年11月3日開かれた債権者説明会。その光景を一部受講生らがビデオに撮っていたらしく、その後、ユーチューブに2種類ほどの動画が投稿された。リンチのような場面は、説明会直後に撮られたものだ。
動画に映っていた社長は、受講生らの問いかけに言葉少なくうなだれたまま。これに対し、なぜか一部受講生から笑い声が起こり、ある女性はこんな皮肉を浴びせた。
「お忙しい中、メイクする時間あったんだもんねえ。そんなきれいなピアス着けて、おめかしして」
受講生らが社長に土下座などを求める場面は、テレビのニュース番組でも放送された。しかし、ユーチューブの動画は、さらに生々しい場面だったため、衝撃を与えたようだ。2ちゃんねるでも祭り状態になり、「こんな事をしたって金は戻ってこないのに」「自己責任だろ 飛び込みで試験受けて来い」「DQN債権者のせいで、その他の債権者もいい迷惑だ」といった声が相次いだ。罵倒したくなる気持ちに理解を示したり、教習所の演出ではといったうがった見方もあったりしたものの、批判的なコメントの方が多かった。こうした批判を受けてか、投稿動画はその後、相次いで削除された。
受講生側弁護士「お話しすることは控えたい」
ネット上では、さらに一部受講生を吊るし上げるケースまで出た。
10代のフリーターとみられる男性が、ミクシィの日記で、無免許運転や飲酒運転を告白していたことが2ちゃんのスレッドなどで晒されたのだ。
この男性は、日記で「警察に捕まりそうになった 無免許で捕まったら中免取れなくなるから危なかった」「みんな飲酒運転でカラオケまで行った」などと書き込んでいた。告白が発覚したのは、男性が08年11月3日の日記で、土下座する社長の写真をアップし、「とりあえず社長…最後に引きずられてたのは笑わせて頂きました 社長乙です」と書き込んだのがきっかけだった。
教習所側の破産申し立て代理人をした桃尾重明弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、一部受講生に苦言を呈する。
「ひどい話だと思います。(社長は)経営責任あるので申し訳ないと言っています。本人に聞いたわけではありませんが、ああいう扱いはいかがかと思っています」
八王子自動車教習所が10月31日の倒産前に受講生に知らせなかったことについて、桃尾弁護士は、「倒産はいつも急なことです。確かに、受講生すべての卒業後ならよかった。なんとかしようと努力したのですが、運転資金がなくなってどうにもならなかった」と話す。負債総額は約17億円とみられ、返金の見通しは、資産の売却後でないと分からないという。
一方、受講生の被害相談に乗っている松原拓郎弁護士は、暴言が騒ぎになっていることについて、「私がコメントする部分ではありませんので、お話しすることは控えたい」とだけ話す。そして、突然の倒産について、「教習所では聞いたことがなく、普通に考えたら、よくない話だと思います」と批判した。
約1700人いる受講生は、1人平均10数万円払い込んでおり、総額2億円ほど返金されていないという。「教習所の土地は15億円と聞きますが、もっと高いのではないかと思っています。早く混乱を収束させることが大切だと考えています」と話している。