都知事の発案で始まった三宅島でのバイクイベントを巡り、協賛を拒否した本田技研工業に対し、石原慎太郎知事の怒りがヒートアップしている。「この大会を意識的に妨害してるんだよ」などと発言。さらに、「取材するな」とホンダがメディアに圧力をかけているとし、「私、命を張っても戦う!。とにかく抗議に行く」などと宣戦布告した。いったい両者に何があったのか。
ホンダは正式な要請がある前に協力を辞退した?
このバイクのイベントは、噴火災害に遭った伊豆諸島・三宅島の復興を目的に開催された「チャレンジ三宅島モーターサイクルフェスティバル」。2007年11月にスタートし、08年10月に第二回目が開催された。ただし、当初は英国領マン島にならった「国内初の公道レース」の看板を掲げ、運営費も3億円と、離島で行うイベントとしては突出していため、開催まで曲折を重ねた。
特に「公道」でのレースは地形的に危険度が高いと、バイク業界や専門家が反発。東京都は国内のバイクメーカーをメインスポンサーにしようと目論んでいたが、
「ホンダは都から正式な要請がある前に『安全性が確実とはいえず遠慮したい』(広報部)として、協力辞退を表明」(東京新聞07年4月25日)
ヤマハ、スズキ、川崎もホンダに倣いスポンサーを辞退。結局は「公道」レースは無くなったが、現在もこの4大バイクメーカーはイベントの協力企業に含まれていない。
第2回が開催された08年10月17日、石原都知事がイベント開幕のステージに立つと、いきなりホンダを名指し。「この大会を意識的に妨害してるんだよ!」とぶちまけた。
ホンダはモーター関係の雑誌、新聞などに対し、このイベントの記事を書いたら絶対に広告を出さない、と言っている。これは絶対許せないこと。命を張っても戦う。近いうちにホンダの社長と会い文句を言ってやる――
こんな宣戦布告をしたのだ。08年10月24日に行われた定例記者会見でもこの話題になると、ホンダがイベントを妨害しているという話を何人からも聞いた、とし、
「報道をした人間には、会社には広告料を出さないって。言いかねないわな、これはやっぱり。企業のおごりで。誰がどんな責任で言ったか知らんけども、実際あるわけだから」
とし、ホンダに乗り込み直に社長にものを申す、と宣言した。
ホンダは本当にイベントを妨害しているのか。ホンダ広報はJ-CASTニュースの取材に対し、
「この件について申し上げることは何もありません。石原知事の訪問については、都から正式な申し出が来ておりません」
と話すだけだった。
ホンダの会合で「イベント反対」と宣言した人物がいた?
バイク専門誌の編集者はJ-CASTニュースに対し、石原都知事とホンダの「不仲」の発端は、都が「公道」レースを強行しようとしたからだ、と説明する。
「安全を確保できないイベントには協力できません、ということでスポンサーを降りた。他のメーカー3社も同じです。結局、公道レースは無くなった訳ですが、第2回目も協力会社から外れたのは、しこりが残っていて、話し合いの前進が無かったからでしょう」
そして、
「ホンダから『記事にすれば広告を引き上げる』などという申し入れは来ていませんし、ありえないことだと思います」
だとすると、石原都知事の発言は何の根拠も無いことになる。東京都総務局行政部振興企画課はJ-CASTニュースの取材に対し、石原都知事の一連の発言は、石原都知事自身が何人かの業界関係者に聞かされた話なのだという。東京都はホンダに対し08年8月に文書で「照会」を求めている、と明かす。ホンダが開いたある会合で、「ホンダとしては、このイベントに反対しているんだ」と述べていた人物がいたはずだ、といった質問が含まれているという。しかし、未だにホンダからははっきりとした回答は来ていない。真相はいまだに闇の中だ。