ワタミではグループ店舗に野菜を供給
一方、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は、2008年8月に千葉県・富里で農業事業を開始。富里市農業協同組合から約2ヘクタールの農場を借り受け、大根・キャベツ、にんじん、ほうれん草などを初年度で約130トン栽培・収穫する計画で、08年秋にも千葉県内のイトーヨーカドー6店舗での販売を開始する。販売店舗数も県内21店舗まで拡大する予定だ。生産履歴管理システムを農場と売り場で一元化することで生産性を上げるほか、品質管理を徹底するのが主な狙い。また、店舗から出される売れ残りの野菜などを堆肥に再活用して、直営農場で再利用する「循環型」農業を展開する。
パソナやイトーヨーカ堂に先立って、居酒屋チェーンを展開するワタミでは2003年に農業事業に本格参入し、グループ店舗に供給している。
同社によれば、全国に8箇所、476haの農場や牧場を展開。2008年3月期の農業部門の売上高は約30億円に上る。農場では、レタス、大根、キャベツ、白菜、インゲン、ブロッコリ、なす、ほうれん草、水菜など約40種類の作物を栽培。自社農場で栽培された農産物の7割はグループ店舗・老人ホームで使用しているという。農業事業に参入したメリットについて、同社は「食の安全」の確保のほか、
「市場を通さない流通がほとんどのため、流通コストの低減ができています。また、店舗やホームという安定した販売先がありますので、安定的に収益を上げられる仕組みになっています」
としている。
耕作を放棄された農地が全国に広がり、05年の法改正で特定法人貸付事業を導入する自治体が増えていることも、一方で背景にある。新たにビジネスチャンスが広がったと見て、農業事業に参入する企業は今後も増えてきそうだ。