「解散先延ばし」をめぐって、与党間の亀裂が深まっている。公明党首脳が麻生首相に対して、11月中の総選挙を求めて直談判した「秘密会合」の様子が共同通信に暴露された。これに対し、自民・公明両党は「記事は事実無根」などとして文書で抗議。共同通信側は「信頼できる情報に基づいている」と謝罪・訂正の考えはないとしている。ただ、記事の中にある「誰のおかげで首相になれたんだ」のくだりが波紋を呼び、思わぬ形で両党の溝が、さらに浮き彫りになった形だ。
怒号が飛び交い、会談は物別れに終わった
問題となったのは、共同通信が2008年10月28日に配信した特集記事。麻生首相が2008年10月26日夜、東京・紀尾井町の「グランドプリンス赤坂」で、公明党の太田明宏代表、北側一雄幹事長が秘密裏に会談した内容を明らかにしたものだ。
26日の「首相動静」を見ると、
「8時10分、紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂。中国料理店『李芳』で秘書官と食事」
とあるが、中国料理店を抜け出してホテル内の客室で会談したものとみられる。
記事によると、太田代表が
「11月末(の投票が)駄目な理由を言ってくれ」
「このままでは福田と同じになってしまうぞ」
などと、「麻生降ろし」までちらつかせながら麻生首相に詰め寄ったが、麻生首相は
「今の経済情勢を考えると、政治空白をつくることはできないでしょうが。景気、金融対策を優先させる。選挙は今じゃないんだ」
と、解散を先延ばしにする必要性を述べたという。公明党の2人からは
「一体、誰のおかげで総理になれたと思っているんだ」
などと怒号が飛び交い、1時間続いた会談は物別れに終わったという。会談後の客室には、麻生首相がまったく手を付けずに冷たくなったコーヒーが残されたという。
この記事に対して、両党は反発。翌10月29日、自民党の大島理森国対委員長が「該当する事実は認識されていない」、公明党の上田勇広報院長は「公明党の名誉を著しく傷つける事実無根の内容が記載された」として、それぞれ文書で謝罪と記事の撤回・訂正を求め抗議した。
共同通信は抗議文に対する公式返信もしない予定
10月31日には、朝日新聞が、この記事について
「与党内は、共同通信が配信したこの記事の話題で持ちきりだ」
と報じるなど、この記事が両党のギスギスした雰囲気が改めて明らかになった形で、抗議・謝罪要求は、その波及をおさえることが目的との見方もある。
一方の共同通信社は、清野勘一編集局次長が
「わが社の配信した記事について、自民党と公明党から抗議を受けましたが、信頼できる情報に基づいて記事化したものです」
とコメント。謝罪や訂正の予定はなく、抗議文に対する公式な返信を行う予定もないという。両党に対しては、現場の記者が同社の対応について伝える程度にとどめる方針だ。
ただし、公明党の太田代表は、記事に対して抗議した翌日の10月30日にも、解散見送りについて
「了解したといえば、了解したということだ。解散とか選挙については、もう1回、よく考えていく」
と、総選挙への未練をにじませており、両党の溝は深いようだ。
なお、両党の広報担当者は、
「当方では、その(抗議文の)件については承知していない」(自民党)
「現段階では、責任者がつかまらず、きちんとコメントできるまでは時間がかかる」(公明党)
などと話し、玉虫色のまま終結しそうな雲行きだ。