専門家が下す恐ろしい宣託 1ドル「85円」円高説

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   2008年10月30日の外国為替相場は1ドル99円を挟んで推移し、ひと息ついたかのように思える。が、これで円高傾向に完全にストップがかかったとみる専門家は少ない。たとえば、日本経済新聞が10月28日付で報じた緊急市場アンケートによると、09年3月末までの見通しとして、5人の専門家がそろって1ドル「83‐85円」まで円高が進む、とみているほどなのだ。

為替介入しても、行き過ぎた円高を抑えるのが精一杯

   「円高はどこまで進むのか」――企業の財務担当者や投資家でなくとも気が気でないところ。なかでも輸出企業の多くは、この夏の時点で1ドル=102‐105円程度を想定為替レートとしていため、いまの急激な円高が長引けば、09年3月期決算では間違いなく業績の下方修正を余儀なくされる。

   日本経団連の御手洗冨士夫会長は10月27日の記者会見で、「為替介入する、しかるべきとき」と語った。株安の原因ともいわれる、あまりに過剰な円高に、円売りドル買い介入を行って相場変動を抑えるよう、政府と日本銀行に求めた。

   10月30日の東京外為市場は1ドル=98円76‐78銭で引けた。前日に比べて1円89銭のドル高・円安。2日続伸して1ドル=100円が見えてきた。ただ、専門家のあいだでは、この円安は一時的な「反発」との見方で一致している。

   日本経済新聞によると、三菱東京UFJ銀行チーフアナリストの高島修氏は08年度内の予想レンジを1ドル85-105円、みずほコーポレート銀行の竹中浩一・国際為替部次長が85-100円、ドイツ証券の大西知生・外国為替営業部長83-103円、クレディスイス証券エコノミストの小笠原悟氏85-105円、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドヘッドオブFXストラテジーの山本雅文氏は85-105円とみている。いずれもいったんは83-85円まで円高が進むと判断している。

   第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「今後も円高は進むが1ドル90円ぐらい」と予測する。

   円高が止まる条件について、アナリストの多くは「株価が安定して市場に安心感が広がること」と口を揃える。いまの世界的な金融商品の換金売りが収まらない限り、円買いが続くとの見方が支配的だ。たとえ為替介入を行ったとしても、「各国が協調すれば効果があるかもしれないが、行き過ぎた円高を抑えるのが精一杯ではないか」(嶌峰氏)と、その効果も限定的とみている。

一時的に79円75銭の史上最高値を更新してもおかしくない

   このところ円安にふれたのは、日銀の利下げ観測の高まりと、株価の上昇によって円売りが強まったことによる。しかし、日銀ができる利下げは、無担保コール翌日物金利の誘導目標を、現在の年0.5%から0.25%引き下げることぐらい。低金利のため引き下げ余地がなく、効果がないというわけだ。

   日銀は10月31日の金融政策決定会合で、国際協調の立場から利下げを検討する。嶌峰氏は、「もし、日銀が再び量的緩和を行うのであれば、大きな円安圧力になって、1ドル90円を超える円高は阻止できる」というが、その可能性はほとんどない。

   日銀の副総裁に就任したばかりの山口広秀氏は10月27日の記者会見で、金利水準について「現在の政策金利0.5%の水準は、日本の経済成長率や物価上昇率との関係からみてきわめて低い、緩和的な水準が維持されている」と述べている。つまり量的緩和、「ゼロ金利」にしなくても、十分に金融緩和されていて、企業にも資金は回るはずとの認識にあるのだ。

   そうなると、円高はしばらく進行するというアナリストらの見立てもうなずける。「為替相場は一度動きに弾みがつくと大きく動く可能性もあるので、一時的には1ドル79円75銭の史上最高値を更新する局面があってもおかしくない」(嶌峰氏)と話す。

   多くの専門家たちが「円高は進む」、しかも1ドル=83‐85円の水準にまで上昇すると予測しているように、輸出企業は覚悟を決めなければならないようだ。

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