発足から1か月が経過した麻生内閣だが、解散日程をめぐる報道が、またしても錯綜している。日経新聞が「『解散先送り』の意向を与党幹部に伝えた」と報じたと思えば、首相は直後に「(そうした事実は)全然ない」と否定。それでも各紙は翌日の1面で「解散先送り説」を唱えているのだ。ただ、これだけ各紙が迷走、はずしまくると、報道する意味がはたしてあるのか、という疑問すら出てきかねない。
「首相 解散先送り」と各紙が打つ
これまで、新聞各紙は「2008年11月上旬解散-11月30日投開票」が有力との説を繰り返してきたが、政治報道の風向きが大きく変わってきた。
例えば産経新聞は、10月26日の1面トップに「首相 解散先送り示唆」との見出しを掲げている。10月25日に北京市内で行った記者会見で「国内的な政局よりも、どう考えても国際的な役割を優先させる必要性を、今回ここに来て改めて感じさせられた」などと「政局よりも景気対策」との考えを強調したことを受けてのものだ。
翌10月27日には、日本経済新聞が、さらに踏み込んで1面で「首相『解散先送り』の意向」との見出しを立て、
「与党幹部は26日、麻生太郎首相から当面、衆院解散・総選挙をしないという意向を伝えられたことを明らかにした」
と報じた。さらに、自民党幹部は麻生首相から電話を受けたといい、記事では
「当分、解散はしないから、よろしくお願いしたい」
などと電話での首相の発言内容を再現してみせている。
ところが、麻生首相は同10月27日昼のぶらさがり会見で、
「全然ないと思う。指示してない。電話したこともない。昨日電話受けた人はいないと思う」
と、日経の報道を否定してみせた。
「最後は、今週末の首相の判断を待ちたい」
それでも、翌10月28日朝刊では、読売新聞と毎日新聞が1面で「先送り」を報じている。いずれも「複数の首相周辺や与党幹部」(読売)や「複数の政府・与党関係者」(毎日)が明らかにしたのだという。特に毎日新聞は「首相は30日にも追加経済対策を記者会見して発表する予定で、年内見送りをその際表明する」と、解散見送りを正式発表する時期についても言及している。
一方、朝日新聞は政治面で
「与党内では解散先送りとの観測が広がるが、解散を見送れば民主党が対決姿勢に転じるのは必至で、国会運営は難しい」
と書くにとどまっており、他紙と比較しても慎重だ。
「解散論者」として知られる自民党の細田幹事長も10月28日午前、国会内で
「最後は、今週末の首相の判断を待ちたい」
と発言。10月25日の段階では「今月解散して来月選挙すれば、12月に税制や来年度予算を決めていける」と発言していたのと比べると、大幅なトーンダウンだとも言えそうだ。
やはり、10月30日の追加経済対策発表の場が焦点になる模様だ。