「東京でまさか、このようなことが起こるとは…」
妊婦が緊急時に受け入れを断られて死亡する例は、この数年でも起こっている。奈良県大淀町立大淀病院で06年8月、分娩中の妊婦が意識不明になり、19病院に受け入れを断られて搬送先の病院で亡くなった。07年8月には下腹部痛を訴えた奈良県の妊婦が病院に受け入れを断られ、救急車で大阪府内の病院に運ばれる途中に死産した。
たらい回しにあうのは、産科医が不足している「地方」の話だと、もはや言えない。日本産婦人科医会の担当者も、
「報道ではじめて知りました。東京でまさか、このようなことが起こるとは…」
と驚きを隠せない様子。休日や夜間の体制は、病院内部でしかわからないという。
「奈良の件をきっかけに、救急時の対応について産科関係者間で論議が高まりましたが、生かされていないのが残念です」
救急体制の問題は、産科だけにとどまらないようだ。総務省消防庁の調査によると、07年中に救急搬送されたのは全国で491万8479 人。そのうち、受入医療機関が決定するまでに照会した回数が、4 回以上は1万4387 件、6 回以上は5398 件、11 回以上は1074 件だった。もっとも多い照会回数は50 回にもなる。地域別でみると、首都圏や、近畿圏などの大都市周辺部で回数が多い傾向にある。医師不足の問題は、東京の最先端の現場でも起こっている。