米国発の金融危機の影響で株価は暴落、外国為替市場では円が急伸して、米ドルやユーロ、豪ドルなどは軒並み下落した。まさに円の「一人勝ち」の様相で、そこで注目されるのが外貨預金だ。メガバンクやインターネット専業銀行には外貨預金への資金シフトが猛烈に起こっている。それが米ドルに加え、ユーロにも波及し始めたのだ。
1ドル100円を切ると動きはじめる
2008年10月24日の東京外国為替市場は、前日比2円53銭円高の1ドル94円台。ユーロでは同6円71銭円高の120円台へと突入した。1ドル95円台の円高は今年3月17日に記録しているが、それを上回った。1ドル94円台は、1995年8月以来じつに13年ぶりのことだ。
そうなると、手元に余裕資金がある人や「機を見て敏」な個人投資家でなくとも、外貨に注目する。11月の連休に海外に出かけるという女性も、「いまのうちにドルに換えておいたほうがいいかしら」とネット情報を見つめるほどだ。
こうしたチャンスに、インターネット専業銀行の住信SBIネット銀行は、10月6日から今月いっぱいまで、「はじめての外貨預金キャンペーン」を実施している。キャンペーン開始の2日後には、1ドル99円台に突入。その後一たん100円台に戻したが、この100円割れを「合図」に、資金が動き出した。
住信SBIでは、「前もって準備していたキャンペーンなのでたまたまだが、それにしてもこれほどの円高は想定していなかった」と、あまりのタイミングのよさに驚いている。
キャンペーンでは、期間中に新規で取引口座を開設し、1000米ドル以上預け入れれば、10米ドルをプレゼントしてくれる。同行は10月20日、昨年9月24日に開業してからの預金総額5000億円をスピード達成しており、少なからず外貨預金が寄与しているようだ。
6か月ものユーロで年3.15%も利息がつく
外貨預金に力を入れている、インターネット専業のソニー銀行は、「売買量をみると、いまのところのピークは6日の週だったが、今週(20日)は対ユーロでも円高が進み、取引は多い水準にある」と話す。傾向として、「1ドル100円を切ってくるとシフトするようだ」と分析している。
通貨別でみると、米ドルが多くを占めているものの、ユーロ建ての取引がようやく動いてきた。「ユーロは02年ごろから長く右肩上がりを続けていたこともあって、なかなか手が出せなかった。それが下がってきたので、取引量は急増しています」(ソニー銀行)という。また、外貨預金の中でも最近増えているのが、豪州ドルだという。
三菱東京UFJ銀行は、直近の実績で「前年同月比1500億円~1600億円も増えている」という。夏のボーナス資金などの一部を一時待機させておき、いわばチャンスを狙っていた資金が動いているが、「家計のポートフォリオと相談しながら、どの資金を、どう動かすか、きちんとみて対応しているようです」と話す。
同行は外貨両替専門店を設置していて、近く海外に旅行へ行く人が「円高のうちに」と両替に訪れることも増えているというが、外貨普通預金であれば、海外のATMで引き出せるので便利だ。
米国は政策金利の引き下げがあって、米ドル普通預金の金利は円預金とほとんど変わらないが、ユーロはまだ普通預金でも年1.45%程度もつく。外貨定期預金であれば、たとえば6か月もの米ドルで10月24日現在年1.801%(ソニー銀行、預入額が1万米ドル未満の場合)、6か月ものユーロで年3.15%(同、1万ユーロ未満)も付く。ちなみに、日本円は6か月年0.645%しかない。
金利と為替差益の両方の魅力があるというわけだ。