米当局との関係悪化を恐れる
三菱UFJは9月、米地銀のユニオン・バンカル・コーポレーションに約3800億円を投じて完全子会社化した。さらに、三菱UFJが申請していた米国での金融持ち株会社の設立資格が米連邦準備制度理事会(FRB)から認可された。持ち株会社化で三菱UFJは商業銀行業務だけでなく、投資銀行業務も幅広く展開できる。だが、こうした米国での事業強化方針も、米当局との関係が悪化すれば、重大な支障が生じかねない。
ぎりぎりの決断を迫られた三菱UFJは、ちょうどワシントンで開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会に出席した畔柳信雄社長と永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取の両トップが現地で陣頭指揮。最終的には、株価下落の影響を受けにくい優先株に出資90億ドル全額を変更。払い込みも当初予定していた10月14日から1日前倒しした。
これで三菱UFJはひとまず当面の損失リスクを回避した。また、優先株が将来、普通株に転換されると、出資比率は21%と当初計画と同じで、「モルガンとの戦略提携を進める方針は変わらない」としている。だが、「危機で行き詰まった投資銀行業務の回復には時間がかかる」との見方は根強く、三菱UFJの巨額投資が思惑通りに実を結ぶかは予断を許さない。