星野仙一氏のWBC監督辞退劇には、球界のドロドロした人間関係も絡んでいる。辞退決断には、バッシングのほか、野村監督やイチローらの「口撃」も奏効したようだからだ。新しい監督候補も、こんな人間関係で決まるのか。
巨人とアンチ巨人の対立軸
星野仙一氏は公式サイトで辞退表明
WBC日本代表監督を選ぶ過程は、ある対立図式を連想させる。それは、巨人とアンチ巨人だ。
北京五輪では惨敗した星野仙一氏(61)を強力に推したのは、巨人の渡邉恒雄球団会長。プロ野球界への影響力は大きく、2008年10月15日に開かれた球界のWBC体制検討会議も、これだけバッシングを浴びながら、「星野監督」に内定を出したほどだ。
これに対し、選考過程を「出来レース」と揶揄したのが、アンチ巨人を公言する楽天の野村克也監督(73)だ。さらに、巨人とは縁遠いイチロー選手も、WBCを北京のリベンジに利用することに反対し、援護射撃した。
互いに監督候補とされる星野氏と野村監督も、激しいバトルを展開していたようだ。
野村監督は10月17日、WBC体制検討会議について、「王も『現役監督は難しい。星野がいい』って言っていたかな」と星野ありきの内情を暴露。自らが監督候補に挙げられなかったことを悔しがるように、「(野村監督を推す声は)ひとっ言もなかったよ」とおどけてみせた。
一方、星野氏は同18日、それに応戦するかのように、サンケイスポーツ大阪版の1面トップを飾った連載コラムで、間接的に野村監督を批判した。次期の阪神監督に決まった真弓明信氏に、野村監督が阪神時代に成績の悪さからマスコミと敵対したとして、反面教師にすべきだとぶったのだ。
「野村さん自身は、WBC監督をやりたい」
あるプロ野球監督経験者は、星野氏と野村監督の関係について、こう解説する。
「分かりやすく言えば、ミスターと王さんのような関係に近いんだろう。だから、ミスターと星野さんは仲がいいし、王さんと野村さんもいいよ」
ミスターこと長嶋茂雄氏は、これまで巨人一筋で来た。これに対し、王貞治氏は、巨人以外での監督も務めてきている。そして、星野氏と野村監督は、巨人寄りか、そうではないかの違いがある。監督経験者は、「この2人では、まったく生き方が違う。星野さんは派手なパフォーマンスが好きだし、野村さんは苦手。お互い嫌いなんだろうね」と明かす。
ただ、王氏は今回、プロ野球コミッショナーの特別顧問を務め、08年10月15日のWBC体制検討会議で星野氏を推した。これは、顧問の立場上と自らの信念から選んだことなのかもしれない。
星野氏が戦線離脱した今、注目を集めるのが野村監督だ。
「野村さん自身は、WBC監督をやりたいと思っているはずだよ。野村さんならどうかといえば、イチローは野村さんに対して尊敬はあっても嫌悪感は持っていないはず。王さんから『野村さんと一緒に戦ってくれ』と言われれば、参加して、前回みたいにチームをまとめていくだろう」(監督経験者)
もっとも、監督候補としては、巨人の原辰徳監督、中日の落合博満監督も挙がっている。さらに、今回の日本シリーズ優勝監督を推す声が強い。
球界の対立図式が今後どう影響し、どんな選考が行われるのか――。