フォードがマツダ株売却 日本の取引先が引き受けへ

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   米大手自動車メーカー3社(ビッグ3)の一角、フォード・モーターが、保有するマツダ株の大半の売却を検討していることが分かった。経営不振に 直面する中、再建資金を確保するのが狙いだが、「マツダ株の売却先次第では大規模な業界再建につながりかねない」(業界関係者)との声が浮上、一時は大騒ぎになった。しかし、フォード・マツダ側はマツダの取引先企業を中心に引き受けを要請、再編に発展する可能性は今のところ薄い情勢だ。

一時はインドのタタ自動車の名前も

   フォードによるマツダ株売却のニュースが伝わった2008年10月11日、「米国発の金融危機がいよいよ日本の自動車業界にも飛び火する」(業界関係者)との観測が広がった。

   フォードはマツダ株33.4%を保有する筆頭株主だ。米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題を発端とした米国市場の低迷で、フォードは主力の大型車の販売が激減し収益は悪化。金融危機の深刻化で資金繰りが行き詰まる恐れも生じた。

   このため再建資金1000億円程度を得たい意向とされ、マツダ株20%程度を売却するとみられる。この20%を同業の自動車メーカーが獲得すれば、業界再編に至るのは必至だ。売却先候補には、国内の複数の大手自動車メーカーの名前が飛び交ったほか、「以前からマツダに興味をもっているインドのタタ自動車が絡んでくるかもしれない」(業界関係者)との声も上がり、国境を越えた再編予測も出てきた。

   しかし、フォードとマツダ側は既に、マツダと親しい企業やマツダの取引先を中心に、買い取りを打診している。既に、住友商事や伊藤忠商事、デンソーなどの取引先が取得の検討を進めているとされる。また、東京海上ホールディングス、三井住友海上火災保険、地方銀行などの金融機関も含め、計約20社が買い取りに応じる方向と目されている。

競合する自動車会社には譲れない

   フォードとマツダ側が親しい企業に株式を売却する方針であるのは、両社が事業運営上、既に切り離せない関係にあり、競合する自動車会社には譲れないためだ。

   フォードは1979年、経営不振に陥ったマツダに出資。96年にはマツダの経営権を握った。両社はこの間、自動車の開発で協力を進めてきたほか、今では、米国やタイ、中国で合弁工場も運営。最近は環境対応車開発でも協力関係にある。「両社が30年もかけて築き上げた関係を今さら壊すことなどあり得ない」(大手幹部)との声は強い。マツダが経営再建に成功し、今やフォード傘下の稼ぎ頭になったのも、フォード傘下で世界的な信用力を得たためでもある。

   「フォードは経営危機を乗り切った段階で、再びマツダ株を買い戻すつもりではないか」(業界関係者)との観測さえ浮上するようになった。ただ、米国発の金融危機は深刻で、ビッグ3の破たん懸念も出ている。フォードが再建を果たす日はいつになるか誰にも予測できず、マツダにとっても、経営体制の見直しが急務なのは間違いない。

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