冷凍かつおの取引価格が2008年10月から急落し、静岡・焼津港で1キロ当たり100円台になった。金融危機による世界的な景気悪化に加え、ユーロ安、ドル安が加速して、外国の缶詰企業が買い控えていることが影響しているようだ。
相場を左右するバンコク市場
かつお節やツナ缶の原料になる冷凍かつおの取引価格が下がり続け、水産会社は頭を抱えている。国内の水揚量の約6割を扱う静岡・焼津港では、2008年10月21日の相場は1キロ156円から160円だった(2.5キロ~4.5キロサイズ、まき網船)。9月まで200円台だったのが、10月7日に198円、同14日に186円と下がり続けている。
相場を左右するのは缶詰工場が多く集まるタイ・バンコク市場だ。この数年、欧州や中東では健康ブームからツナ缶の需要が高まり、相場が上がっていた。バンコクでは08年1月には1トン当たり1500ドルを超え、6月には2000ドルまで上がった。ところが10月に入り1500ドルに急落した。
水産会社大手、マルハニチロホールディングスの広報担当者は、その理由についてこう話す。
「アメリカを発端とした金融危機による世界的な景気悪化に加え、このところユーロ安、ドル安が加速して、欧州の輸入元が買い控えているようです」
まき網船を4隻所有する極洋は、
「今回の下落が短期的か、長期的なのか、今の時点で判断できません」
と話す。
価格の乱高下に生産者は悲鳴
海外で主にツナ缶に使われる冷凍かつおだが、日本では多くがかつお節の原料になる。かつお節やだしの素を製造する大手メーカーらは原料高を理由に8~10月にかけて定価を5~10%上げていたが、冷凍かつおが急落したことで、流通サイドから値下げを求める声が上がりそうだ。
焼津鰹節水産加工業協同組合事業部の担当者は、
「生産者は1キロ200円台の時の在庫を抱えているので、数週間前に原料価格が下がったからといって、すぐに定価を安くできません。こうした原料価格の乱高下が生産者にもっとも厳しいです」
また、値上げした後も量販店では特売価格で売られている。そのため生産者は今も原料高を価格に転嫁できていないという。