「日本の金融機関はそんなにやっていないはず」
CDSには規制がなく、想定元本(保証金額)が引き受けた金融機関の自己資本の数十倍以上になることもある。そういった取引が金融機関同士、あるいは金融機関と事業会社のあいだでサインひとつ、「相対取引」で行われているため、どの金融機関が、どの企業を「保証」して、どれほどの想定元本があるのか、つまり実態は不明だ。
さらにはサブプライムのように、証券会社がこうしたデリバティブ取引を複数束ねて、別の金融商品として販売しているケースがあって、リーマン関連債券がどの程度組み込まれているかなど、購入している金融機関側ですら、すぐにはわからないこともあるという。
リーマンを対象としたCDSばかりに目が行くが、CDS市場はここ数年拡大の一途をたどり、07年末時点で62兆1732億ドルに上る。この中には連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を対象としたCDSのほか、経営破たんした米貯蓄金融機関のワシントン・ミューチュアルを対象としたCDSなどが含まれていて、その清算が間近に迫っている。
CDSの売り手には、バンク・オブ・アメリカやシティグループ、バークレイズにBNPパリバ、クレディスイスなどの世界の名立たる金融機関が並ぶ。今となっては、なにかあれば公的資金で救済される金融機関ばかりだが、「一般的なCDSの契約は倒産以外にも、大規模なリストラなども含まれているはず。実体経済の後退で企業倒産や大リストラが増えれば、契約は履行されて損失は膨らむ」(外資系証券の関係者)との観測もある。
リーマン級の企業が破たんするのは10年に一度ともいわれるが、世界的な金融危機にあってはそんなデータもまったく当てにできない。ただ、国際金融アナリストの枝川二郎氏は「欧米はCDSに積極的だったが、邦銀はそうでもない。メガバンクなどの一部の大手銀行にあるくらいではないか」とみていて、国内金融機関の痛みが少ないのが救いかもしれない。