デリバティブの手法を使ったクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる取引の実態が注目されている。例えば、経営破たんしたリーマン・ブラザーズを対象とするCDSだけで推計4000億ドル(40兆円)にのぼる。この商品を売った金融機関はほぼ全額を失うことになる。金融危機をきっかけに景気が悪くなれば、CDSによる損失の全体額も膨らみ、それがさらなる不安を招き、株暴落の背景にもなっている。
リーマンの40兆円、ほぼ全額失うことに
CDSは、企業が債務不履行に陥った場合、投資銀行などが債務を肩代わりする、いわば「保証」契約。たとえば、08年10月から2013年10月までの5年間に、ある企業が取引先であるAメーカーの倒産リスクを回避したいとする。Aメーカーが倒産した場合、CDSの売り手である金融機関は買い手である企業に1億円(想定元本)を払う。ただし、企業の方は金融機関に毎年、保証料として50万円を支払う、と約束する。
1年後、メーカーが倒産しなければ、企業は金融機関に50万円を支払う。2年後も倒産しなければ、もう50万円支払う。こうして契約期間中に倒産しなければ、企業は金融機関に総額250万円を支払うことになる。
しかし、契約期間中にメーカーが倒産した場合は、金融機関が企業に1億円を支払わなくてはならない。
デリバティブを取り扱う事業者の業界団体である国際スワップ・デリバティブス協会(ISDA)は2008年10月10日、経営破たんした米証券大手のリーマン・ブラザーズを対象にしたCDSの清算価値(リカバリー)が、元本の8.625%に決まった、と発表した。
破たん後に暴落したリーマンの社債の価値などに連動する形で決まったとされ、これにより想定元本(保証金額)の推計4000億ドル(40兆円)のうち、リーマンを「保証」したCDSの売り手金融機関は、リーマンの経営破たんで想定元本の91.375%を支払い、損失を被る。一方、CDSを買った金融機関や企業はその分もうかるわけだ。