人気アニメやマンガなどの舞台になった神社で参拝客が急増する例が日本各地に起きている。「ひぐらしのなく頃に」の舞台になった岐阜県大野郡白川村の「白川八幡神社」もその一つ。神社としては参拝客を歓迎しているが、世界遺産の場所であり、「町おこしイベント」のような展開は難しいのだそうだ。
有名になった「鷲宮神社」だけでない「聖地巡礼」ブーム
人気アニメ「らき☆すた」の舞台になったことで、埼玉県鷲宮町の「鷲宮神社」の参拝客が急増、町をあげてのイベント開催にまで発展した。こうしたアニメやマンガなどの舞台になった土地を訪ねることを、ファンの間では「聖地巡礼」と呼ぶ。「鷲宮神社」では、ファンが押し寄せ記念写真を撮影したり、絵馬にアニメの登場人物の似顔絵などを描いて奉納するといった異変が起きている。2008年正月3が日の参拝客は前年を17万人上回る30万人。この人気にあやかろうと町の商工会議所が旗を振り、「らき☆すた」のイベント開催や、キャラクターグッズを発売。08年9月7日のお祭りには「らき☆すた」の神輿まで登場。祭りの参加者は07年を2万人上回る約5万人になった。
「聖地巡礼」をする場合、ファンにとって神社は貴重な存在だ。参拝することが第一の目的だが、休憩できたり、絵馬を奉納したりして、「巡礼」した記念が残せる。公的な場所だから記念写真も撮影しやすく、アニメの登場人物になりきってポーズも撮れる。
アニメ「おねがいツインズ」に登場する長野県の上諏訪神社。「紅」の東京都新宿区にある「皆中稲荷神社」なども巡礼の目的地になっている。「紅」は08年4月に首都圏のUHF放送局で放送が始まった。「皆中稲荷神社」はJ-CASTニュースの取材に対し、20代~30代の男性ファンの参拝客が目立って増えたとし、
「きっかけが何であったとしても、参拝は歓迎しております」
と話している。
「ひぐらしのなく頃に」は架空の「雛見沢村」が舞台だが、風景に使っているのが岐阜県大野郡白川村。白川村には「ひぐらし」が同人ゲームだった04年頃からファンが訪れるようになったが、「白川八幡神社」に参拝客が急に増えだしたのが07年に入った頃から。08年は参拝客が前年の倍増。08年7月、8月には「ひぐらし」の大学生のファンが夏休みを利用し観光バスなどで計500人が参拝に来た。
「一時的盛り上がりはマイナス」とマスコミ取材断る
神社の創建は和銅年間(708~714)と伝えられ、祭神は応神天皇。この神社がある白川郷は、95年12月に世界文化遺産に指定されている。
そうした由緒・伝統ある神社なのだが、現在、奉納されている絵馬の多くは「ひぐらし」のアニメキャラの似顔絵などが描かれている。願い事は、「羽入(登場人物)に会えますように」「気になるあの娘にフォーリンラブ」「お酒に強くなれますように!!」など、アニメ関連を含め様々だ。参拝するファンの7割~8割は男性。セーラー服を着たり、派手な色のワンピースを着たりし記念写真をケータイで撮影する人もいる。何か場違いな気もするが、他の参拝客に迷惑をかけることはなく、トラブルなどは一切起こってないそうだ。同神社では、
「若い参拝客が増え活気付いていますし、みんないい子なので嬉しく思っています。『ひぐらし』が映画化されるそうで、それも楽しみにしています」
とかなりの歓迎ムードなのだ。ただし、埼玉県鷲宮町のように、イベントなどが今後行われるのかというと、
「それは難しいんじゃないかと思いますよ」
ということだった。
J-CASTニュースが白川村商工会に「ひぐらし」関連のイベントの予定があるのか聞いた。「ひぐらし」ファンの観光客が増えているのは確かだが、世界遺産という大きな観光資産があるため、新しい観光イベントを企画することはないだろう、という。白川郷観光協会によれば、「ひぐらし」で町をPRするどころか、
「マスコミの取材は断っています」
という。「ひぐらし」効果で盛り上がったとしても、それは短期間で終わる可能性が高く、長期的視野で見ると一時的な盛り上がりはマイナスに働く可能性が高い、という判断なのだ。また、「ひぐらし」は惨殺シーンが有名で、関連のゲームは「R指定」されている。見慣れない観光客の姿に強い抵抗感を感じる町民も多いようで、イベント開催は難しそうだ。