「国産ワイン」といえば、日本国内で栽培されたブドウを原料にしたもの、と誰だって思う。ところが、「国産ワイン」と表示された70%は、海外のブドウが100%使われていたり、輸入ワインがブレンドされたりしているのだという。このカラクリを「告発」する本が出版され、話題を呼んでいる。
濃縮したブドウ果汁に水とアルコールを加えてできあがり
ブドウワインの「水増し」製法が幅を利かせている
ワインメーカー・北海道ワインの嶌村彰禧社長が書いた「完全『国産』主義」(東洋経済新報社:2008年9月25日刊)が問題の本。「国産ワイン」という表示があっても日本産のブドウが使われているとは限らず、市場に出回っている安価なワインの殆どが、南米産などの安価な輸入ブドウを使っていると暴露している。しかも、輸入ワイン(通称:バルクワイン)を国産とブレンドするケースが多い。また、ブドウをジャムのように濃縮したものに、水とアルコールを加え、「国産ワイン」として販売するやり口もあるそうだ。
04年の国税庁の調査をもとに計算すると、「国産ワイン」の75%が輸入ワインと、濃縮した果汁で作られている。ちなみに国税庁が発表した05年のワインの「原料の使用状況」を見ると、国産原料の使用割合(生果換算の重量比)は29.1%で、輸入原料の使用割合は70.9%。
ワイン用のブドウは栽培にも管理にもカネと手間隙がかかり国産のブドウを使っていると利益が出にくい。こうした「水増し」製法が幅を利かせている理由は、コストを下げるためだという。
日本国内で加工されたものならば国産
もっとも、このやり口、違法ではないらしい。日本ワイナリー協会にJ-CASTニュースが取材すると、
「輸入されたブドウを使っても、ブレンドされたものでも、最終的に日本国内で加工されたものならば国産という表記になります」
という答えが返ってきた。
欧州各国には「ワイン法」があり、ワインの原料産地、加工地を明記する必要がある。日本にはそうした規定がないため「国産ワイン」の定義もあいまいになり、純粋な国産ワインと、加工されたワインが「国産ワイン」として店頭に並ぶことになる。嶌村社長は、本の中で、
「消費者への十分な説明もないままに、日本のワイン文化の発展を妨げる大きな問題を抱えているのです」
と書いている。こうした現状をどう考えているのか、大手ワインメーカーに聞いたところ、
「よくわからないし、コメントのしようがない」
ということだった。
山梨県にある日本屈指のワインメーカーは、
「当社のワインは、ブドウの産地をはじめ細かな説明をしていますし、輸入ワインであれば輸出国をはっきり表示しています。他社がどのような表示をしているかはわかりません」
とだけ話している。