検索することを意味する「ぐぐる」という動詞が登場するほどに一般化しているのが米グーグル社による検索エンジン。ほかにもヤフーなどがあるものの、「国産エンジン」の影が薄いのが日本のネット社会の実情だ。このほど「日本消滅(ジャパン・ナッシング)-IT貧困大国・再生の手だて」(祥伝社新書)を出版した「IT弁護士」こと牧野二郎弁護士によると、過去には、日本にもすぐれた検索エンジンが存在したが、淘汰されてしまったのだという。「それでも国産エンジンが必要だ」と主張する牧野弁護士に、今後の検索エンジンの見通しを聞いた。
2~3年後に登場したグーグルに負けた理由
牧野二郎弁護士は「国産検索エンジン」の必要性を強調している
―何故、日本では検索エンジンが発達しなかったんでしょう?先生の著書を拝見すると、日本の著作権法が大きく関係しているようですが…。
牧野 要するに、「日本の著作権法が検索エンジンをつぶしてしまった」ということなんです。著作権法では「コピーをすることについて、著作者の承諾をとらないといけない」ということになっています。
日本には1994年の段階で、「千里眼」をはじめとする、非常に高性能な検索エンジンが開発されていました。95年に僕がホームページを公開したときに、その(「千里眼」の)人たちからメールが来て、「検索エンジンを作りましたので、データをコピーして、発信していいですか」というお願いがきた。僕は、「当たり前でしょ、どんどんやってよ」と思ったのですが、彼らは、日本の著作権法にしたがって、いちいち承諾を取ってまわっていた訳です。
―承諾を取ってまわる作業は、検索エンジンを作るにあたって、大きな負担になりますよね。
牧野 ホームページを持っている人がメールアドレスを公開している場合でも、メールにすぐ返信があるとは限らない。無視されるものもあるし、スパムメールと認識されてしまうものもある。「よくわかりませんが、承諾しません」なんて人もいるわけで、ものすごく苦労して承諾をお願いしても、実際に承諾してくれるのはわずか。何千件メールを打っても、せいぜい何十件しか戻ってこない。
でも、承諾したものしかコピーできない。データベースをつくっても、コピーの承諾が得られないと、その内容をデータベースの機能として使えなくなってしまう。その結果、この検索エンジン自体が回らなくなってしまう。
そのため、「千里眼」でキーワードを検索しても「not found」「not found」ばっかり出てくる、という結果になったのです。
ところが、グーグルをはじめとする「後発」の検索エンジンを使ってみると、ものすごく良くヒットする。何故かと考えてみると、日本勢は引き続き承諾を求め続けて「3000件達成、6000件達成」とやっていたのに対して、2~3年後に登場したグーグルが自動的にデータを収集して、「10万件達成、100万件達成」とやる。100万件対3000件じゃ、勝つ訳がない。