作家の唐沢俊一さんが、ブログの記事から無断引用していたことが分かった。1年前にも無断引用しており、今回が2度目。テレビなどで披露しているカルト的な雑学知識は、本当に裏づけがあるのだろうか。
「盗用ではないと思っています」
無断引用されたブログ記事
今回、無断引用したカルト話も、事実とすれば、衝撃的なまでにオドロオドロシイ内容だった。
舞台は、メキシコシティにあるアパート。市警が2007年10月8日、悪臭の通報を受けて部屋に踏み込むと、電動ノコギリでバラバラにされた女性の死体が見つかった。引用元のブログ「世界の三面記事・オモロイド」の10月13日付記事によると、そのカルトぶりはこうだ。
「寝室のクロゼットには胴体が、冷蔵庫には片足と片腕が、そしてシリアルの箱には骨が入っていたという。また、鍋には片手と片足(足首から下)が煮込まれており、フライパンの中にはフライにされレモンが添えられた、人肉と思われる肉塊も入っていた」
部屋にいた男(40)が、交際中の女性(30)を殺した疑いだ。作家を目指しており、部屋から「人食いの本能」という原稿が見つかったという。
一方、作家の唐沢俊一さんは、これとほぼ同じ内容を「月刊ラジオライフ」(三才ブックス)11月号の連載コラムで紹介した。
無断引用は、2ちゃんねるで08年10月6日、「あまりにひどいパクリ」と書き込まれて発覚したらしい。その後、ブロガーらの間で話題になり、米カリフォルニア州在住の映画評論家の町山智浩さんも、自らのブログ日記で、「どう見ても、コピーして語順を入れ替え、語尾や単語を変えただけ」と指摘。ネット上では、同様な指摘がほとんどだ。
月刊ラジオライフ編集部の遠藤悠樹編集長は、J-CASTニュースの取材に対して、こう説明する。
「出典を明記していないのは落ち度と言われれば、確かにその通りです。しかし、盗用ではないと思っています。他人様の文章というよりニュースから引用したものです。コラムは、もともとニュースや過去の文献を参考にして事件を読み解くことが前提になっています」
07年4月から、朝日新聞の書評委員も
ところが、唐沢俊一さんの無断引用は今回が初めてではない。2007年5月に幻冬舎から出した新書「新・UFO入門」も、個人のブログとの類似点が指摘されていたのだ。漫画関係の話題を紹介している「漫棚通信ブログ版」の05年の記事で、ブログの筆者からも抗議された。新聞各紙も07年6月上旬の記事で取り上げている。
唐沢さんは同8月3日、新書編集部と連名で、「今回の件に関し深く反省し、今後このようなことのないよう、出版活動に対し身を引き締めてあたる所存です」との謝罪文を出していた。
2度も無断引用があると、その雑学知識も本当か疑問が持たれるらしい。さらに、町山智浩さんらブロガーの間では、唐沢さんの文章に間違いがあることが指摘されている。
例えば、ラジオライフのコラムをまとめた最新刊「唐沢俊一のトンデモ事件簿」では、IRA(アイルランド共和軍)の記述を巡っての指摘が相次いだ。IRAは、唐沢さんの紹介とは違って、現在はアイルランド独立を目指す組織ではないこと。また、英俳優のショーン・コネリーは、スコットランド独立を支援し、8年も前に「ナイト」の称号をもらっていたのに、唐沢さんが間違えていたことなどだ。
ラジオライフの遠藤編集長は、07年の無断引用について、「耳には入っていました。しかし、筆者の方を信用してやっていますので、特に連載前の話し合いなどはしていません」と明かす。雑学知識の信用度については、「ネット上の情報を参考にしているとは思います。しかし、そのまま使うことはないと思っています」と言う。今後の対応策については、「まだ考えていません。唐沢さんと話す機会に相談したい」としている。
なお、唐沢さんは、07年4月から、朝日新聞の書評委員も務めている。
本人「自分なりの猟奇事件論を展開した」とコメント
唐沢俊一さん本人も、J-CASTニュースにメールでコメントを寄せ、次のように事情を説明している。
「今回の指摘は指摘として真摯に受け止めたいと思っています。ただし、記事本文を読んでいただければおわかりになりますように、あれはサイト記事を『そのまま』書き写したものではありません。もちろん、あのサイトも(ニュースサイトという性格上)参考にはしていますが、他に海外のサイトなども参照し、あの"事件"の内容を紹介しました。あの連載は(単行本の前書にも書きました通り)さまざまな猟奇事件をあちこちの文献や新聞記事、さらにはネットなどで渉猟し、それを紹介した上で、自分なりの猟奇事件論を展開したものです。論の展開の上で、他の人の論じ到達した内容を私独自の論として語れば、これは問題であると思いますが、事件の紹介としてそのあらましを紹介する場合、元になる事件が同一である場合に、ニュース紹介サイトと類似の表現等が出てくることは避けられない場合があると思います。もちろん、紹介サイトとはいえ、参考にした際にはその旨の表記が必用ではないか、というご意見もおありと思いますが、参考サイトに複数のものがある場合、雑誌掲載などに際しては読者の煩雑やスペースの問題を考え、それらを省略する場合もあります。また、あの事件は今回の原稿中では、落語で言うマクラに相当する部分で、必ずしも深い意味を持ってそのニュースを選んでいるものではありません。そこから本論の村山槐多に話を持っていくためのつなぎの部分であり、テーマの類似から本論へと誘導する部分です。話の流れの中では『こういう事件があったが』という紹介を主にするため、雑多なニュースソースのものが入り交じります」