ユニークな言動で注目を集めている北京五輪金メダリストの石井慧選手(21)が、総合格闘技への転進をめぐってゆれている。スポーツ紙が「(格闘技での)デビュー戦は大みそか」と報じたかと思えば、他紙は「事実上の柔道界追放」と報じ、転進は確定的にもみえた。ところが、会見では一転、「(大学を)卒業することを第一に考えている。卒業のことで頭がいっぱい」とトーンダウン。一方で、「興味はあるが焦ってもしょうがない」とも話し、先行きは不透明だ。
「デビュー戦は大みそかになる模様」
石井選手は2008年夏の北京五輪柔道男子100キロ超級で金メダルを獲得、直後のインタビューで「五輪の重圧は(全日本男子監督の)斉藤先生の重圧に比べたら、屁の突っ張りにもなりません」と発言、話題を呼んだ。その後もユニークな言動を繰り返し、異例のキャラクターとして注目を集めていた。
今回の騒動の発端になったのが、08年10月5日の「スポーツ報知」だ。石井選手が「プロ格闘技界へ転向する決意を固めた」と報じたのだ。同紙では、転向の意向は「本人が親しい関係者に話した」とした上で、「デビュー戦は大みそかになる模様」などと予想している。
翌10月6日には、全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(57)が、石井選手から転向の意志を伝えられていたことを報道陣に明らかにし、
「本人が決めることだし、好きな道を行けばいい。もう、ロンドン五輪に向けた構想には入っていない」
と、転向を慰留せず、強化選手からも外す考えを明らかにした。これを「事実上の追放」として報じる新聞も相次いだ。NHKも7時のニュースで報じたこともあって騒動は拡大、翌10月7日朝には、石井選手が会見を開くことになった。
09年3月の大学卒業時に「最終決断」?
会見では、柔道連盟側に総合格闘技への興味があることを伝えたことを認めながらも、
「今は国士舘大学の学生なので、卒業することを第一に考えています」
とトーンダウン。総合格闘技への転向について問われると、
「将来、行ってみたいという興味はありますが、焦ってもしょうがないし、時間をかけてゆっくり考えたい」
と、やはり転向への意欲は残っている様子。また、
「父親も先生(監督)も『卒業が第一』と考えています。自分は授業に出るようにしています」
とも述べ、今回のトーンダウンの背景には、周囲から「格闘技よりも卒業を優先させるべき」といった説得があった可能性を示唆した。
石井選手の今後の身の振り方については、09年3月の大学卒業時に明らかになるものと見られ、現段階では全日本柔道連盟の広報担当者も
「それ(今後の対応)は然るべき委員会が決めること、現段階では、具体的なアクションは全くありません」
と話している。