アップル社製の携帯電話「iPhone(アイフォーン)」向けアプリケーションソフト(アプリ)が全世界で1億本以上ダウンロードされ、「iPhone」のゲーム端末市場が開花しつつある。国内ゲームソフトメーカーもアプリケーション開発に続々と参入している。ゲーム端末としての「iPhone」の魅力は何なのか。
アプリのダウンロード数1億本を超える
ハドソンが発売した「BOMBERMAN TOUCH」はApp Storeで人気アプリに
アップル社は2008年9月9日、同社のアプリケーションダウンロードサイト「App Store(アップ・ストア)」から「iPhone」「iPod touch」向けアプリのダウンロード数が1億本を超えた、と発表した。「App Store」のアプリケーションには、ゲームのほか、ニュース、電子書籍など様々な種類があり、米国ではバラク・オバマ候補陣営がアプリを早々に開発して、キャンペーンに利用している。
「iPhone」では、「App Store」にワイヤレスでアクセスし、アプリを直接ダウンロードして、その場で使い始めることができる。また、アプリには無料と有料があり、有料のものには、ユーザの「iTunes(アイチューンズ)」アカウントに課金される仕組みだ。
「iPhone」は、大型画面に画面接触に複数点で反応するタッチパネルを備えたうえ、端末機器の動きに反応する加速度センサーも備えている。これまでの携帯電話にはなかった機能を備えている点から、ゲーム端末としての可能性に注目が集まっているのだ。
ゲームソフト大手のハドソンは、「iPhone 3G」の発売された08年7月11日に「BOMBERMAN TOUCH -The Legend of Mystic Bomb-(ボンバーマンタッチ ザ レジェンド オブ ミスティックボム)」、「AQUA FOREST Powered by OctaveEngineTM Casual(アクア フォレスト)」、「SUDOKU(数独)」の3タイトルを同時に「App Store」で発売。これまでに合計9タイトルを販売している。このうち、タッチパネルでボンバーマンの操作性を向上させた「ボンバーマンタッチ」は、発売から2週間以上にわたって国内の有料アプリダウンロードランキングで1位になるヒット作となった。
ハドソンによれば、同社は海外の携帯電話向けゲーム市場に参入したが撤退したという苦い過去があったが、「iPhone」向けのアプリ販売を「グローバル市場に参入するチャンス」と捉えているという。同社広報担当者は、
「今までの携帯電話だと機種が多種多様で、コンテンツを作り変える必要があったが、iPhoneでは今のところそれがない。そのうえ、タッチパネルに加え加速度センサーを備えていることから、面白いコンテンツを作ったり、新しい遊び方を生み出せるなど、いろんなことにチャレンジできる端末だと考えている」
と話す。
「携帯音楽プレイヤー」の機能を持つ「iPhone」の特性生かす
「PSP(プレイステーション・ポータブル)に比べれば一部でスペックが劣る点はあるかもしれないが、ケータイでは絶対体験できないような、(操作性の)気持ちよさがある」
と話すのはゲームクリエーターの西健一氏。同氏とゲームクリエーターの飯野賢治氏が開発し、フィールドシステムから発売されたアプリ「new tonica」は、08年8月発売後に国内ダウンロードランキングで1位になった。画面中央に表示される球体をタッチパネルで回転させたりして、音楽を再生したり、効果音を鳴らすという新しいジャンルのゲームで、タッチパネルの操作性に加え、「携帯音楽プレイヤー」の機能を持つ「iPhone」の特性を活かした。
2008年10月2日に東京・銀座のアップルストアで行われたイベントの中で、飯野賢治氏は「世界の62か国で同時にリリースができるのが凄いところ。日本で販売したソフトを海外で販売するのは(通常なら)大変なことだ」と話し、西健一氏は「ゲームソフトの在庫を抱えるリスクがなくて済むのが素晴らしい」と述べるなど、「App Store」でアプリを販売できることの利点を語った。
ただ、「iPhone」のアプリケーション市場はまだ開拓されて間もない状態。西氏が「世界中の人が手探りの状態」と指摘するほか、ゲーム業界関係者も「収益の出るモデルとなるかどうかは、iPhoneの普及台数による」と話すなど、まだまだビジネスとしての将来は不透明な面も残されている。