官民が一体となって地球温暖化対策を進めるなか、ここ1年ほどで「エコ活動」に異議を唱える動きが広がりを見せている。雑誌が特集記事を掲載し、エコ活動に異論を唱える本がベストセラーになる一方で、その「反論本」も登場。書評欄にも大量に書き込みがされ、各方面で賛否両論が入り乱れ、ヒートアップしている状況だ。
アマゾンの書評欄に110件以上のコメント
2008年7月に行われた洞爺湖サミットでは、G8首脳が2050年までに温室効果ガスの排出を少なくとも半減させるとした長期目標を掲げたのは記憶に新しいところ。日本政府でも08年度の温暖化対策予算として1兆2166億円を組んでおり、内訳は森林整備などの森林吸収源対策に1853億円、原子力発電所関連の交付金などに1188億円、といった具合だ。
民間でも、「リデュース、リユース、リサイクル」の「3R運動」は広く知られているところで、特に「リサイクル」を行うことが「エコな活動」という認識は、なかば「常識」として広がっているとも言えそうだ。
ところが、ここ1~2年ほどで、そんな「エコ活動」に異議を唱える動きが活発化しているのだ。例えば、07年2月に発売された「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社)では、
「地球が温暖化しても、南極や北極の氷が解けて水位が上昇することはない」
「森林を活用するために、紙や割り箸はどんどん使うべき」
「ペットボトルを回収しても、実際にはリサイクルされていない」
といった、常識を覆す主張を展開。これまでに30万部以上を売り上げた。アマゾンの書評欄を見ても、相当な関心を集めたようで、110件以上のコメントがついている。
その内容はというと、
「これほど嘘と議論のすり替えに満ちた本は他にない」
「ここまで言われると何が正しくて間違っているのかわからなくなってきます」
「環境問題のトリックを解明し、本質をついている」
などと賛否両論だが、書籍に対する評価の平均は5点満点中4点。これまでない視点を提示したという点が好感されている模様で、コメントにも長文のものが多い。
「バイオ燃料が環境破壊を引き起こす」
この書籍の著者である武田邦彦・中部大学教授は、07年9月に続編である「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」(洋泉社)を、08年5月には「偽善エコロジー」(幻冬舎)を出版し、同様の主張を展開。同様に書評欄では賛否両論が飛び交っており、この問題に対する関心の高さをうかがえる。
論争は読者レベルにとどまらず、07年12月には「リサイクル懐疑論」に対する反論本も出版されている。本のタイトルは、ずばり「"環境問題のウソ"のウソ」(楽工社)。武田教授の著書で利用されているデータの信憑性や、論理飛躍について検証した本だ。
武田教授以外にも、「エコ懐疑論」を唱える動きはある。たとえば「週刊朝日」08年2月15日号では、「日本を覆う『ファディズム』を追え!」という特集を掲載。「ファディズム」とは「一時的な熱中による過大評価」を指す言葉だが、3ページ半にわたって「バイオ燃料が環境破壊を引き起こす」といった識者の主張が展開されている。
それ以外にも、「文芸春秋」08年8月号では「エコ予算1兆円が食いつぶされる」との記事を掲載。地球温暖化防止のための予算が、環境省や厚生労働省の利権になっている実態を明らかにしている。
「環境を守る」という目標に異論はないにしても、「エコ活動」の中身や手法をめぐる議論は、今後も尽きることはなさそうだ。