富山県の面積は、実は県が公表している半分ほどの広さで、県庁所在地の富山市は含まれない。また、山形県も実際は公表している3分の2の広さで、山形市は面積に含まれない。なぜこんなことになっているのだろうか。
山形市は山形県の面積に含まれていない
富山県は県の面積を約4247平方キロメートルと公表しているが、国土交通省国土地理院の「全国都道府県市区町村別面積調」(2008年4月1日速報)によれば、富山県の面積は約2045平方キロメートルで倍も違っている。この差は、境界未定の市町村が存在するためで、地理院はそれらを面積に入れていないからだ。面積に含まれないのは富山市、黒部市、立山町、朝日町など。
一方山形県は約9323平方キロメートルという公表数字に対し、地理院は約6652平方キロメートル。ここには山形市、鶴岡市、上山市などが含まれていない。
国土地理院はJ-CASTニュースの取材に対し、
「市町村などの境界線が決まっていないものについては計測ができるはずがありません。境界線を巡って『紛争』が続いている地域もあります」
と話す。富山県の場合は、5万分の1の地図を基に面積を算出していたが、地理院が20年前、2万5千万分の1の地図に基準を変えた。より精密にしたわけだが、この時に自治体間で見解が一致せず境界線が未画定になり、面積が定まらない自治体が現れたのだという。
国土地理院と県が公表している面積差について、富山県、山形県はどう考えているのか。
「地方交付税も県が公表している面積通りにもらっていますし、特に何か問題が起こっている、ということもありません」
と両県の市町村支援課は口を揃える。国土地理院は県の面積と共に、「参考値」して境界線が決まっていない市町村を加えた県の面積も発表しているが、それが地方交付税の基準になっている、というのだ。
境界線確定で地方交付税を得た十和田湖
それでは今後どうなるのか。
「実際に境界線が決まっていない地域は全国にありますし、決めるために必要とされる費用やエネルギーを考えれば、おそらく決めることはないだろうと思われます」
と山形県市町村支援課は話している。
ただ、面積の大きさが地方交付税に関係するため、境界をめぐり紛争が起きている地域もある。秋田県と青森県の県境にある十和田湖の湖面を、青森6、秋田4に分割する覚書が08年8月29日に交わされた。1871年の廃藩置県以来、未確定のままだった十和田湖の青森、秋田県境問題がようやく決着したわけだ。この背景には地方自治体の財政難がある。これまで61平方キロメートルもある十和田湖の湖面自体は、境界未定だったため両県の面積に加算されなかった。早ければ08年内にも総務省が境界線を承認。地方交付税は秋田県1600万円、秋田県小坂町が1100万円、青森県2400万円、青森県十和田市1600万円の計6700万円が上積みされる見込みで、09年度分から交付される。