「食欲の秋」を迎えて、イメージチェンジした北海道米が全国に攻勢を仕掛ける。「おぼろづき」と「ふっくりんこ」という自信作がお目見えするからだ。なかでも、「おぼろづき」は道内で試食販売した際には、あっという間に完売し「幻のお米」といわれたほど。これまでイマイチの評価だった北海道米。これでイメージチェンジに成功できるのか。
若者の口にあっていた北海道米
北海道内では「八十九」の名前で販売されている「おぼろづき」がいよいよ首都圏でも味わえる
2007年7月から08年6月までの、北海道米の販売量は58万3681トンで、米どころ新潟県の60万7703トンに肉薄した。ここ数年の首位争いは熾烈になっているが、北海道のブランド米で知られる「ななつぼし」や「きらら397」は、首都圏では「コシヒカリ」や「あきたこまち」に比べて知名度が低い。
ブランド米にはそれぞれ特徴があって、米粒の大きさや歯ごたえ、粘り、甘みなどが違う。北海道大学の米ブランド研究チームが首都圏在住の一般消費者300人を対象に行った調査では、「柔らかさ」では「あきたこまち」の評価が高く、「ふっくらしている」「ツヤツヤしている」「香りがよい」の評価では「コシヒカリ」が高い支持を得ている。
北海道米の「ななつぼし」と「きらら397」は、「粒がしっかりしている」「粒が立っている」「粒が大きい」「歯ごたえがある」の項目で評価が高かった。
銘柄名を隠して試食をしてもらったところ、「きらら397」が10代でのトップになるなど、北海道米は10歳~30歳代からの評価が高いことも分かった。
調査対象者の年齢によって、お米の美味しさを評価するポイントも異なる。若い人ほど粒のしっかりしたお米や歯ごたえのよさなど硬めのご飯を好み、30歳代ではふっくらした感じ、40歳代ではご飯のツヤツヤ感や香りのよさ、50歳~60歳代は粒が立っていることや粘りを好む傾向にあった。
今まで首都圏で販売されてきた「ななつぼし」や「きらら397」は、しっかりした食感をもち、若者に好まれやすい米といえそうだ。
値段を高めに設定した自信の高級ブランド米
一方、この秋から全国デビューするのが「おぼろづき」と「ふっくりんこ」。北海道内で「幻のお米」とまでいわれる「おぼろづき」の特徴は、「ツヤツヤ感」や「柔らかさ」「粘り」にある。「ふっくりんこ」は、あっさり感とぷちぷち感、歯ごたえのよさが売り物だ。
最大の消費地・首都圏では、老いも若きも「コシヒカリ」など有名ブランドを選ぶ傾向にある。この圧倒的なブランド力に対して、北海道米はさまざまな消費者に向けた品種をきめ細かく揃えることで、販売の拡大をめざす。
特徴からみると、「おぼろづき」は「コシヒカリ」の味に馴染んだ40歳代以降の世代に送る高級ブランド米といえる。価格もこれまでの「きらら397」や「ななつぼし」に比べてやや高めに設定するところなど、かなりの「自信作」と見受けられる。
若者に評価が高い「きらら397」と「ななつぼし」に、中高年の好みにマッチした「おぼろづき」が加わったことで、ラインナップも整った形だ。
いまや「米どころ日本一」を争うほどになった北海道米。しかし、首都圏ではまだまだ新潟産「コシヒカリ」や「あきたこまち」に圧されている。
「おぼろづき」の「柔らかさ」と「粘り」で攻勢をかけるホクレン農業組合連合会の担当者は、「品種だけではなく、『ブランド』を打ち出す販売に向けた取り組みは、これまでの府県米にはないところだと思う」と話している。