イラストSNS「pixiv(ピクシブ)」が開設から1年で月間3億PV(ページ・ビュー)、会員数32万人にまで急成長した。開設当時、サイトを運営するクルーク(東京・渋谷区)の社長自ら「ユーザーが1000人いけば」といっていたくらいで、「想定外の急成長」は間違いない。なぜ、ここまで躍進することができたのか。
投稿されたイラストも160万枚に達する
3億PVを達成したイラストSNS「pixiv」
クルークは2008年9月17日、同社が運営する「pixiv」が月間(08年8月16日~9月15日)で3億PVを達成したと発表した。会員数も32万人に達し、投稿されたイラストも160万枚に達した。
「pixiv」は2007年9月4日に、イラストを投稿できるSNSとして開設。08年4月に月間1億PVを達成し、その後も08年7月に2億PVを達成するなど、急成長。9月5日の発表によれば、1人1日あたりの平均ページ閲覧数は約35ページ、1日あたりのサイト内でのイラスト投稿数は約7000となっている。しかし、なぜ半年も経たないでPVが3倍になる「急成長」を遂げたのか。
「ユーザー数がだいたい1000人いけばと思っていた」
と開設時の予想を話すのはクルークの片桐孝憲社長。「(プロではない)一般ユーザーがイラストを投稿してもそう簡単に反応が得られないのではないか」と考えていたからだ。 「pixiv」は、一般ユーザーがイラストを投稿できるとともに、そのイラストに10段階の評価やコメントを付けられるようにしているのが特徴。また、投稿者以外のユーザーが投稿されたイラストにタグをつけることもでき、そのタグに関連するイラストを探すこともできる。
「絵を描くユーザーは自分でホームページをつくったり、ブログなどで公開したりしていた。pixivなら簡単にイラストを投稿でき、他のユーザーからの反応を得やすい。イラスト、マンガに興味があるユーザーも存在はしていたが、なにせホームページを1つ1つチェックするのには限界がある。その点、pixivならいろいろなユーザーのイラストをすばやくチェックでき、好きな作品やユーザーに出会ったらブックマークや評価、コメントを気軽にすることができる。うまくいったのはそのせいでしょう」
片桐社長は急成長の理由を説明する。「予想外」だったのは、こうしたコミュニケーションを活発に行うユーザーがたくさんいたことだ。
将来は外国語での展開も検討
投稿されたイラストの下にコメント投稿欄があり、評価や感想が書き込まれる。「ジャンルは多種多様なので、これが多いというのはないが一般的にマンガっぽい絵が一番多い」(片桐社長)といい、凝ったイラストには多数のコメントがつけられる。プロフィール欄に掲示板も設けられ、
「ブックマーク(気に入ったイラストを登録する機能)ありがとうございました」
といったコミュニケーションが活発にされている。
アダルト作品も投稿可能だが18歳未満のユーザーは閲覧不可。他人の描いた作品を投稿するユーザーもないわけではないが、見つけ次第すべて削除しているという。これまでに企業などからのクレームはなく、ユーザー同士のトラブルも多くないようで、「いまのところ大きな著作権問題はない」としている。
海外のユーザーも約5%おり、将来は外国語での展開も検討している。
「広告で収益をあげ、将来的にはユーザーに収益を還元できるモデルを作りたい」
と片桐社長は今後の目標を語っている。