別荘感覚で田舎に暮らしたいという声が多数
移住はちょっと大げさだが、別荘感覚で週末だけ田舎に住みたい。そんな人にオススメなのが、都心から1~2時間で行ける近場の田舎だ。東京都心から車で2時間の栃木県矢板市も、農作業体験とセットにした「お試し田舎暮らし」を行っている。空家を月5万円で貸し出し、最長6カ月間利用できる。今の時期は米の収穫の真っ盛りだ。「体験」とはいうものの、作業は本格的で、収穫から脱穀、袋詰めといった出荷にいたるまでの全工程を行う。
窓口となる矢板市農業公社の担当者によると、出荷時は1袋あたり重さ30kgする袋を積み上げるため、慣れない人は2~3時間もすればぐったりするとか。季節によって、菊、苺、しいたけも採れる。
「先日、東京・大手町で行われた、ふるさと回帰イベントに参加したところ、都会に住みながら、時々、別荘感覚で田舎に暮らしたいという声が多かったです。09年度から賃貸物件を増やして、団塊世代を中心にPRしていきたいと思います」
ほかにも全国でお試し暮らしを斡旋する自治体や団体が増えている。総務省自治行政局過疎対策室が運営する田舎暮らしの紹介サイト「交流居住のススメ」には、現在522の団体が登録している。06年7月のスタート時から200団体増えた。ここでは「短期滞在型」、都心と田舎を行き来する「往来型」といった非移住型のプランを多く提案している。
総務省過疎対策室の担当者は、その理由についてこう話す。
「都会に住む人を対象に調査を実施したところ、田舎暮らしを体験してみたいと答えた人の割合は、20~30歳代が約3割、40~60歳代が約4、5割で、若い人ほどちょっと試したいという意見が多かったのです。短期滞在でも空き家を有効活用できて、地域活性につながります」
一方、こんなデータもある。過疎対策を進める全国組織「全国過疎地域自立促進連盟」の調査によると、08年4月1日現在、人口減少率が高い「過疎地域」は神奈川県と大阪府を除く45都道府県。また、全国の1788市町村のうち、約4割にあたる732市町村で過疎化している。高齢化が進み各地で過疎が深刻となるなか、あの手この手で移住者を取り込もうと、どこも必死だ。