「麻生本命」と言われる自民党総裁選をめぐり、海外メディアもこの話題を特集している。ただ、論調は否定的なものが多く、特にニューヨーク・タイムズは、米国で論議を呼んだ「豚に口紅」との表現を引き合いに出しながら、「変革への動きが単なるショー以上のものかどうかははっきりしない」とこきおろしている。
「豚に口紅」は小池百合子氏ではない
ニューヨーク・タイムズは麻生氏の経済政策を酷評した
総裁選を酷評しているのは、2008年9月17日に掲載された「ポピュリストは選挙でアピールし、政治劇場を求める」と題した東京発の記事。記事は、こんな書き出しで始まる。
「バラク・オバマは、対立候補を『豚に口紅を付けようとしている』として非難したが、当地でも、『与党の自民党が、ほとんど同じことをやろうとしている』と指摘する声が上がっている」
「豚に口紅」とは、変化が表面的にしか起こらないことを示す言葉で、米民主党の大統領候補のオバマ上院議員が「ジョン・マケインも改革を唱えているが、あれは変革ではない。同じものを違う呼び方で呼んだだけ。豚に口紅を塗ったところで、豚は豚だ」として共和党のマケイン陣営を批判したことで知られる。これに対して、「『豚に口紅』発言は、ペイリン副大統領候補を意識したものであることは明らか」としてマケイン陣営が猛反発した、という経緯がある。
もっとも、今回の記事で使われた「豚に口紅」という例えは、候補の中では唯一口紅を利用する小池百合子氏とは、あまり関係なさそうだ。小池氏は、記事の中では、簡単な経歴や、「政府広報にミニスカートで登場した」といったエピソードが短く紹介されているに過ぎない。
記事では、01年の「小泉旋風」と、今回の総裁選との対比に多くのスペースを割いている。各候補者は小泉人気の再来を期待している、としながらも、
「変革への動きが、単なるショー以上のものかどうかは、はっきりしない」
と懐疑的だ。さらに、
「佐々木(毅・学習院大学)教授や他の政治アナリストによると、自民党は、力のあるポピュリストがもたらすような、本当の、破壊的な変革を恐れている。結局は、小泉氏が自分の党に対する戦争を宣言して人気を得た」
と、「自民党は、小泉氏だからこそ変革できた」との見方を示している。
麻生は決して小泉ではない
さらに、矛先は「当選確実」とされる麻生氏に向けられている。特に、経済政策が酷評されている。小泉政権では経済が好転し、小泉氏の退任後は自民党の支持が低迷していることを指摘した上で、麻生氏は小泉氏と同様に「一般受け」することを紹介。麻生氏がマンガ好きなことや、秋葉原で「オタク」に向けて演説をしたことにも触れている。
ただ、経済政策については、両氏の根本的な違いを指摘しているのだ。
「総裁選で分かるように、麻生は決して小泉ではない。他の候補とは違い、麻生氏は政府の支出を増やすことで低迷している経済を下支えしようとするなど、古典的な自民党政策を追求している」
他の4人の候補者についても、
「『コイズミ的』美しい外見を借りてきているに過ぎない」
とバッサリ。記事は終始、自民党の変化について否定的な記述が続き、渡部恒三・民主党最高顧問の、こんなコメントで締めくくられている
「彼ら(総裁選の候補者)はみんな、小泉劇場をやろうとしているんです。でも、それを上手くやれたのは、小泉さんがおそらく最後でしょう」