セイコーエプソン労働組合が全額出資した投資信託の運用、販売会社「ユニオン投信」が2008年9月22日から、追加型株式投信「ユニオンファンド」の募集を開始する。労働組合の投信参入は初めてで、セイコーエプソン・グループに勤める人はもちろん、「組合活動でつながった働く仲間に勧めたい」(ユニオン投信の清水学取締役)という。賃金が上がらず、賞与も業績連動型の企業が増えるなかで、労働者が自らの手でお金を殖やし、生活を自己防衛する手段を提供する。
販売店は持たず、インターネットで直接販売
「ユニオン投信」は9月19日の投資信託協会の理事会で正式に承認され、22日から「ユニオンファンド」を募集する(10月17日まで)。設定日は10月20日。複数の投信証券に投資するファンド・オブ・ファンズ型で、CIFグローバル・エクイテチィ・ファンドクラスA(ルクセンブルグ籍円建て外国投資法人)やALAMCOハリス・グローバルバリュー株式ファンド2007、ニッポンコムジェット・エマージングマーケッツファンドSA(さわかみ投信)などを投資先とする、アクティブ(積極的)運用の公募投信。
販売店は持たず、インターネットでの直接販売で1万円から購入できる(ホームページの開設も22日)。毎月定額を積み立てて投資するサービスも行う。
セイコーエプソン労働組合は1946年に発足。組合員は現在、約1万2000人。「ユニオン投信」の資本金2億円は、発足以来、「予備金」として積み立ててきた余剰資金から組合規約に則って出資を決めた。
組合が可処分所得を殖やす方法を考えてきた
企業のグローバル化などに伴う年功序列賃金の崩壊、成果主義の浸透で、組合活動の「生命線」ともいえる賃金アップが望めなくなるなかで、セイコーエプソン労組は12年ほど前から「ライフ・サポート活動」に取り組んだ。
ファンドマネジャー(FP)の役割を強め、家計支出のコントロールや確定拠出型年金などの資金運用セミナーなどを繰り返しながら、「可処分所得を殖やす方法を考えてきた」と、労組の副執行委員長でもある清水氏はいう。
少子高齢化が進み、将来の増税や医療費の上昇、年金負担の増加と、このままでは支出ばかりが膨らんでいく。「元本保証で、年6%、8%で運用できる時代ではない。投信は元本保証ではないが、長期運用であればリスクは軽減できる。ある程度リスクをとって運用しないことには、生活防衛もままならない」(清水氏)と意気込む。
今後、労組と関係のあまりない個人投資家をどの程度呼び込めるかが注目される。