マンガ評論家の伊藤剛さんが自身のブログで、NHKの番組「BSマンガ夜話」のゲスト出演が決まっていたのに突然降ろされた、と明かしている。理由は同番組レギュラーの評論家・岡田斗司夫さんの圧力のせいだというのだ。
「伊藤さんはちょっと違うんじゃないか」
マンガ評論家・伊藤さんのブログ「伊藤剛のトカトントニズム」
伊藤さんが書いたのは、ブログ「伊藤剛のトカトントニズム」(2008年9月18日)。この日は「BSマンガ夜話」の放送日で、伊藤さんが出演するはずだったのだという。08年8月22日に番組制作会社からゲスト出演の依頼があった。マンガ「よつばと!」について語り合う番組だったため楽しみにしていた。しかし、08年9月3日、NHKと制作会社の担当者から出演は取りやめ、という通告と謝罪を受けた。
「岡田斗司夫氏より、『伊藤さんはちょっと違うんじゃないか』と言われた」
ということだった。
岡田さんの意向が優先されたのは、岡田さんが番組レギュラーの地位にあっただけでないと主張する。
「NHKの番組担当者の一人は、(岡田さんが主要メンバーを勤める私的団体の)『と学会』のバッヂをつけてぼくの前に現れていた」
つまり、NHKは岡田さんと「一心同体」だったというわけだ。伊藤さんの出演が決まった背景は、NHKではなく、番組制作会社が伊藤さんの過去の仕事を評価したから。NHKの担当者が番組の企画に加わった時点で、岡田さんの圧力が生まれ、自分は切られたのだ、という解釈なのだ。
伊藤さんと岡田さんは過去から因縁がある。98年に岡田さんの編集で刊行された「国際おたく大学」(光文社)をめぐり、伊藤さんは岡田さんと出版社を名誉毀損で訴えた。自分について書かれた記事が誹謗中傷に満ちていたという理由だ(後に、出版社側が謝罪文を掲載し和解)。また、伊藤さんは08年5月にブログで岡田さんの著書を批判したこともあった。そうしたことが、今回のゲスト出演を降ろされる背景にあったに違いない、と伊藤さんは見ている。ただし、先の裁判でも被害を受けたのは自分であり、加害者が被害者を「切る」のは立場が逆で、出演をふいにされるのは不条理、と考えているようだ。
「伊藤氏には了承いただいております」
もっとも、伊藤さんにはNHKからこんな説明があったという。
「伊藤さんはちょっと・・・」と岡田さんは言ったが、「ゲスト出演させるな」とは言っておらず、出演取り止めはあくまでNHKの判断だった――。
伊藤さんはブログの最後に、一部のテレビ誌に自分の出演が告知されていたため、楽しみに待っていたファンもいたかもしれないとし、
「見たかったという方がもしおられましたら、番組にFAXを送り、その気持ちをNHKに伝えてくださればと存じます」
と結んでいる。
実際にこのようなやり取りが伊藤さんとNHKにあったのだろうか。J-CASTニュースがNHKに取材すると、広報局は、
「伊藤氏に出演を依頼したのは事実です。NHKが総合的に判断した結果、出演を見合わせました。この件については伊藤氏にお話をして了承いただいております」
とだけ回答した。