「リーマン・ショック」は地獄の入り口 米金融機関破綻はこれから続発する

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   リーマン・ブラザーズが経営破たんする一方で、次の焦点と見られていた保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)を、米政府と連邦準備制度理事会(FRB)が救済したが、米国では、まだまだ「破たん予備軍」はひしめいている。日本の預金保険機構にあたる米連邦預金保険公社(FDIC)は、117行の問題行をリストアップしているのだ。

中小の米銀ではすでに「取り付け騒ぎ」発生

   サブプライム問題が表面化した以降続いている金融市場の混乱は、日本でもなじみのある証券大手のリーマン・ブラザーズの経営破たんを招き、米証券大手のメリルリンチがバンク・オブ・アメリカ(BOA)に救済合併される事態に陥った。

   株式市場ではリーマンの次に危ない金融機関をさがして、保険大手のAIGの株価が急落したが、2008年9月17日、米政府と連邦準備制度理事会(FRB)が最大850億ドル(約9兆円)を融資して同社株式の79.9%を保有する救済策を発表した。とはいえ、日米欧の株式市場は下落基調のまま。経営不振の金融機関をめぐる合併観測も相次いで噴き出している。

   「リーマン・ショック」は、米国金融の再編本番を告げたよう。実際に、地方の、中小の米銀ではすでに「取り付け騒ぎ」が起きている。

   FDICによると、08年初から9月5日までに閉鎖された米地銀は、1月のダグラス・ナショナル・バンクをはじめ11行。7月25日にはファースト・ナショナル・バンク・オブ・ネバダとファースト・ヘリテイジが同時に破たん。8月1日にはファースト・プライオリティ、8月22日にはコロンビア・バンク・アンド・トラスト、同29日にインティグリー・バンク、9月5日にはシルバー・ステート・バンクが破たんしている。

   いずれも金曜日に破たんが発表され、日本の金融危機のときと同様に、市場への影響を考慮した「金-月処理」が行われた。

   「破たん予備軍」はまだある。FDICのデータを基に、みずほ証券・金融市場調査部の石原哲夫シニアクレジットアナリストが試算したところでは、資本不足の銀行が08年第1四半期時点で18行あった。その後、ANBフィナンシャル、ファースト・インティグリー、ファースト・プライオリティの3行が破たん。残りの15行のうち、中核自己資本比率(Tier1)が3%を割り込んだ資本の大幅不足行として、コロラド・フェデラル・セービング(2.0%)があり、4%を割った資本不足行には、インペリアル・セービング・アンド・ローンとピーチツリー・バンクがある。

   「不良債権問題が最も深刻と思われる100行」リストをみると、総貸出しに占める不良債権の割合が20%超、30%超の銀行が散見できるし、自己資本に占めるネットの不良債権の割合も100%超の銀行が半数以上ある。

FDICはペイオフ「資金不足」を宣言

   9月15日に経営破たんしたリーマン・ブラザーズをめぐって、ポーグルソン米財務長官が「公的資金の投入を考えたことは一度もなかった」としたように、米金融当局は今後も、基本的には「民間でできることは民間で」という姿勢を貫くとみられる。日本のように、税金で地域の銀行を救済することはないとの見方は少なくない。

   しかし、FDICはリストアップした117の問題行のうち、実際に破たん・整理する銀行が、これまでの経験則から13%ほどになるとみていて、こうした破たん処理にかかる資金、つまりペイオフで預金者に払い戻す資金が「不足していることを宣言しています」(石原氏)という。

   経営不振の地銀は、「リーマン・ショック」による市場の混乱で、財務内容をさらに悪化させることになる。その地域の経済がしぼんでしまい、しいては米景気の後退感がさらに強まる心配もある。

   9月18日には、米貯蓄金融機関大手のワシントン・ミューチュアルが買い手を模索しているとの報道があり、その候補にJPモルガン・チェースやシティグループ、カリフォルニア州のウェルズ・ファーゴに、英国のHSBCホールディングスなどが挙がっている。

   みずほ証券の石原氏は、「邦銀が地銀を含めた米銀の買収に乗り出す可能性はあります」という。「リーマン・ショック」は、米金融機関を世界的な再編の渦に巻き込んでいる。

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