農薬や毒カビで汚染された「事故米」は、工業用糊や、合板を張り合わせる接着剤などの原料に限定して販売した、という農林水産省の説明がウソであることがはっきりしてきた。テレビ朝日系「報道ステーション」も「米は使わない」という特集を放送し、同省も「調査不足、と言われればその通りです」といい、お粗末ぶりを認めた。
業界団体が「米は使っていない」
テレビ朝日系「報道ステーション」(2008年9月16日放送)は、「『工業用のり』米は使わない」という特集を組んだ。農水省が「事故米は工業用糊の原料に限定して販売した」と発表した直後、工業糊の業界団体が「米は使っていない」と発表。合板(ベニヤ板)の接着剤の原料という説明については、東北合板工業組合が「全く使われていない」。日本合板工業組合連合会に加盟する30社を調べたところ、米を材料に使っているのは僅か3社だった、などという内容だ。
また、「三笠フーズ」を監督している九州農政局の職員がインタビューで登場し、
「糊(を原料にする)の需要を把握していたかといえば、把握していなかった。今思えば、把握していたほうがよかったのかなと・・・」
などと答え、同省のお粗末ぶりがさらされた形だ。
本来の「工業用糊の原料限定」としての需要がほとんどないのだから、「事故米」を購入した米粉加工販売会社がどう処理するかの選択肢は限られてくる。農水省は本当にそのあたりの事情を知らなかったのだろうか。
世界貿易機関(WTO)協定で日本はミニマムアクセス(MA)としてコメの最低輸入枠約77万トンを義務付けられている。このうち10万トンは通常米として、30万トンは煎餅や味噌の原料として使われるが、残りの約37万トンの用途ははっきり決まっていない。
このMA米、08年3月末時点で約130万トンが在庫になっている。保管のための倉庫代が200億円になる年もあるのだという。さらに、06年から残留農薬の基準を変える「ポジティブリスト」制度が導入され、殺虫剤「メタミドホス」が新たに検査対象になったため、「事故米」が相当数増える結果になった。
農民運動全国連合会(農民連)の笹渡義夫事務局長はJ-CASTニュースに対し、
「農政局が業者に事故米の買取りを求めてきたという話を聞く。在庫が嵩み、早く処理したいという気持ちが見え見え。三笠フーズなどは渡りに船のような存在だったのでしょう。事故米に工業用糊原料の需要が無い、ということを知っているとすれば、官民の癒着、さらに共同でペテンを働いたという疑念が生まれても不思議ではない」
と話す。
「工業用糊の需要が全く無いということはなく」
さらに笹渡務局長は、農水省が「事故米」について国民に隠していることが他にもある、と明かす。今回明らかになったのは03~07年度の5年間に農水省が売却した「事故米」の総量7400トン。実は、輸入途中に「事故米」が発覚する場合があり、この5年間で1000~3000トンに達する、と農水省は農民連に伝えたという。この米は日本の商社が買い取った。
「この事故米の使用用途について、国民には何も明らかにされていません。政府は情報を全て明らかにし、事の解決を早期に進めなければいけない」
と笹渡務局長は話している。
農水省は「事故米」が糊の原料としての需要がなかったことを知らなかったのか。なぜ、転売の危険がある米を売ったのかについて、
「調査不足、と言われればその通りなのです。ただ、工業用糊の需要が全く無いということはなく、買いたい業者がいたために売った、ということなんです」
とだけJ-CASTニュースの取材に答えた。
もっとも、汚染された米が本当に工業用糊の原料に使われたかどうかですら未だに明らかではない。