米国第4位の証券会社、リーマン・ブラザーズが経営破たんした影響で、世界的な金融不安が広がりつつある。ニューヨーク株式市場が2001年の同時多発テロ直後以来の下げ幅を記録し、これを受けてアジア諸国の市場も急落している。新聞やテレビはこのニュースを最大級の扱いで取り上げ、「次はどこに波及するのか」といった視点で報じるメディアも登場するなど、「世界的金融危機」の始まりとしてとらえている。
FTは「急落が保険業界にも広がる」との大見出し
ニューヨークの株式市場は、9・11以来の下げ幅を記録した
リーマン・ブラザーズは2008年9月15日、連邦破産法11条の適用を申請し、経営破たんした。負債総額は約6130億ドル(約64兆円)で、米国最大の破たんとなった。これを受けて同日のニューヨーク株式市場(ダウ平均)の終値は前週末比504.48ドル安の1万0917.51ドルと、01年の同時多発テロ直後以来の下げ幅を記録した。翌9月16日には、これがアジア各国にも波及し、東京株式市場の終値は前週末比605円04銭安の1万1609円72銭。約3年2ヶ月ぶりの安値となった。円相場も、1ドル=104円台までドル安が進んだ。
米英各紙は、このニュースを最大級の扱いで伝えている。
「次はどこに波及するのか」とばかりに、トップ項目としてAIGの経営危機について取り上げたのは英フィナンシャル・タイムズ。ウェブサイトでは、「急落が保険業界にも広がる」との大見出しを掲げており、AIGのみならず、保険関連銘柄が大幅に値下がりしていることを紹介している。さらに、「バークレーズ、リーマンの資産を視野に」との記事を掲載、バークレーズ銀行が、リーマン・ブラザーズの資産購入に向けて協議に入っていることを報じており、「戦後処理」が着々と進んでいることをうかがわせる。
それ以外にも、「ウォール街の危機」というタイトルの特設コーナーを設け、今回のリーマンの破たんで、ロンドンでも数千人単位で失業者が出る可能性があることを指摘している。
ニューヨーク・タイムズは大統領選との関連にも触れる
一方、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「銀行危機がアジアの株式市場を直撃」との見出しで、アジア全域で株価が急落していることを報じている。また、「投資家は米金融業界の混乱にイライラしている」とも紹介している。
一方、ワシントン・ポストは
「政府、危機収拾に向けて苦闘」
との見出しで、一連の動きを報じているほか、英BBCは「世界的な市場の混乱が続く」と、トップ項目で報じている。
ロサンゼルス・タイムズは、今回の破たんをきっかけに、自らの財務状況が悪化することを恐れた金融機関による貸し渋りが進み、中小企業やベンチャー企業の資金繰りが悪化する可能性を指摘している。
各メディアの視点が、単なる「リーマン破たん」にとどまらず、「世界的金融危機」にシフトしてきていることがうかがえる。
「震源地」の地元でもあるニューヨーク・タイムズは、15日のニューヨーク市場の下げ幅の大きさや、東京、ソウル、香港などアジア各地の市場で株価が下落したことを最も大きく扱っている。
さらに、大統領選との関連についても触れている。記事では、共和党のマケイン候補も、民主党のオバマ候補も、今回の「破たん劇」についても詳細な政策は示していない、とした上で、これまでの両者の発言などから、マケイン候補が「規制緩和論者」なのに対して、オバマ候補は、投資銀行などに対する規制を進めようとする立場だということを指摘。
「これまでに両候補が示してきた記録や原則からすると、この問題に対しては、大きく異なったやり方で取り組みを進めていくものとみられる」
と分析。どちらの候補が大統領になるかによって、破たんへの対応策が大きく変わってくることを指摘している。