子供たちの「社交場」駄菓子屋さんで売られている菓子の「当たり」が減っている。子供にとって「当たりが出てもう一個」というのはワクワクする魅力なのだが、原材料費や包装費、運搬費などが高騰しているものの、子供向け商品のため値上げはできず、メーカーは苦渋の選択で「当たり」を無くしたり、減らしたりすることに決めたのだという。
高松市のメーカーは20年も続いた当たりを無くす
香川県高松市の駄菓子メーカー香西食玩は、魚肉のすり身を揚げた人気商品「揚げ柳」(1個30円)の当たりを2008年4月から廃止した。それまでは30個入りの1パックに2つの当たりが入っていて、当たりが出ればもう1個「揚げ柳」がもらえた。原材料費などの値上がりで価格を維持するのにギリギリの状態だった。それでも、かれこれ20年も続いた当たりを無くすことは苦渋の選択だった。同社はJ-CASTニュースに対し、
「原材料費など何もかも高騰し、一般の食品メーカーのように値上げも考えましたが、少ないお小遣いで沢山の種類が買えるのが駄菓子の一番の魅力ですから、30円を40円に上げてしまったら魅力が薄れます。だから値上げはできない、という判断でした」
と打ち明ける。
昭和26年創業の大阪の菓子卸問屋「いしだや」は、駄菓子の当たりや、クジの当たりがめっきり減ってきた、と話す。ただし、小売店の多くは、
「このご時世だから仕方がない、と受け止めているようです」
というのだ。値上げされるよりは、サービスを削ってもらうほうがありがたい、というわけらしい。
全国的に旧来の駄菓子屋は減少し、逆に増えているのがテーマパークでの併設や、商業ビルなどに出展する「複合的」な駄菓子屋。ここでは雑貨やインテリアなども販売されている。
「ターゲットにしている客層は、子供さんというよりは大人。それも当たりの減少につながっているのではないでしょうか」
「クジ」を作るメーカーも少なくなっている
駄菓子業界を直撃しているのはなんといっても少子化問題。もともと薄利多売の商品であり、買っていく子供の数が少なくなれば原材料費の高騰を経営努力で吸収できない。創業50年の東京都江戸川区「ぼうや」の店主はJ-CASTニュースに、この10年で近所の子供の数が半分になっている、と打ち明ける。昔は、先のような駄菓子の当たりだけでなく、紐や紙を引いて駄菓子や玩具が当たる「クジ」がたくさん店頭にあり、子供たちに人気だった。その「クジ」も今や店内に2、3個しかない。子供が少なくなり利益が出ないため、「クジ」を作るメーカーも少なくなっているのだそうだ。
「子供のときに買っていた人が親になり、子供をつれて遠方から来てくれています。子供はこんな店を知らないからビックリして、2時間も遊んでいったりします。この商売は今後も難しいかもしれませんが、これだけ子供が楽しんでくれるわけですから、残っていってほしいなと思います」
と店主は話している。