石油価格の高騰でクリーニング店のサービス価格が上がり、羽毛布団やカーテン、カーペットも洗えるコインランドリーの利用が人気だ。クリーニングに比べて、値段が安くて仕上がりが早いからだ。主婦の節約志向はいろいろな面で急速に進んでいる。
羽毛布団シングル2枚丸洗いして1500円
全国に107店のコインランドリーを展開する洗い屋本舗(東京都八王子市)は、羽毛布団や毛布、カーテンやカーペットが洗える大型機(12~22kgサイズ)を導入している。家庭の洗濯機で洗うには大きすぎて、クリーニングに出していたのが、コインランドリーで手軽に洗えるようになり、主婦を中心に女性が利用している。
人気の理由は、安さと仕上がりの早さだ。羽毛布団シングル2枚が一度に洗えて、洗濯代800円に乾燥代700円で合計1500円。同じ分量をクリーニング店に出すと約1万円かかる。かなりお得なのは間違いない。さらにクリーニングは仕上がるまでに3、4日以上かかるが、コインランドリーは洗いに30分、乾燥に30~40分と、合計1時間近くで済む。同社業務部の責任者は
「洗濯機から乾燥機に移す手間はありますが、洗ってその日のうちに使えると好評を得ています。使用感についても、『ふくらみが出て、新品同様になった』という声が寄せられていて、継続して利用してもらっています」
とPRする。
同社では大型機の販売もしている。
「大型機は毎月3~5台程度、売れています。いまどき布団が洗えないコインランドリーは集客効果がなく、台数を増やしているようです」
と話す。また全国規模でコインランドリーを運営している大手企業は全店舗に大型機を導入、ここでも主婦に好評だ。
家庭用の洗濯機も進化している。クリーニング店と同じ方式を用いた「ドラム式洗濯機」は「もみ洗い」と「たたき洗い」ができ、これまでの水流式に代わり主流になっている。さらに、革製品やシルク製品が洗える洗濯機も登場した。空気中の酸素をオゾンに変えて吹き付けて、水を使わずに汚れを分解する。
最近は洗えるスーツも登場した。紳士服大手のコナカは「シャワークリーンスーツ」を2008年2月から販売している。温水シャワーで流すと汗の汚れや臭い、ホコリや花粉、食べこぼしが取れる。シャワー後、水切りに約1~2時間放置して、水滴が落ちなくなったら風通しの良い場所に移動させるだけと簡単だ。
クリーニング店は年間数千軒ずつ減少
こうした「生活防衛策」もあって、クリーニング店は大打撃を受けている。
厚生労働省の調査によると、クリーニング店はこのところ、年間数千軒ずつ減少している。直近の06年度は14万3367店で、前年に比べて4000軒近くも減った。
業界では数年前から過当競争が激化し、客を取り込もうと「Yシャツ1枚100円」の店も現れて値下げ合戦になった。価格破壊が進むなか、ボイラーの燃料や洗剤、溶剤に使っている石油が高騰し、経営が成り立たなくなっている。高齢化が進む個人経営店で、これを機に廃業が相次いだ。
07年6月に5~10%値上げした大手チェーンの白洋舎(東京都渋谷区)広報担当者は、
「売上げは微減していますが、人件費の削減などでカバーしているため大きな影響は出ていません。しかし個人経営の場合は、石油代に加えて、1台あたり約1000万円かかる機材もあり、苦しくなっているようです」
と明かす。