東京・渋谷区の宮下公園が2008年度中にも大規模な改修に入る。既にナイキ・ジャパンがネーミングライツ(命名権)の取得や同社の出資によるスポーツ施設の新設を渋谷区に提案しており、計画が詰めの段階に入っている模様だ。改修推進派の区議は「区民が望む総合スポーツ公園になる」と意欲を見せるが、「ホームレスが追い出され、生活の場が奪われる」といった反発の声もあがる。行政の「区民のため」とする取り組みと「弱者救済」の立場がぶつかり合っている状況だ。
ホームレス支援者が反発
渋谷区は、ナイキ・ジャパンの全面的支援を受けて、宮下公園の改修事業に乗り出す方針だ。宮下公園は渋谷駅ほど近くにある、山手線と明治通りに挟まれた縦長型の公園。08年9月からの議会での報告を経てから、08年度中にも改修が着手される見通し。計画では、公園内にスケートボードやオープンカフェが新設される。
渋谷区土木公園課はJ-CASTニュースに対し、ナイキから提案があったことを認めたものの、「これから具体的な話が出てくるもので、計画は白紙」としており、「公表できるものはない」との立場だ。しかし、改修事業推進派の伊藤毅志区議はネーミングライツの取得も含めた改修事業の計画がすでに詰めの段階で、今年度中に改修事業が始まるとの見方を示している。
こうした動きに反発しているのは、宮下公園に寝泊りするホームレス支援者などが参加する「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」。同会は「誰もが能動的に、自由に利用できる公共性が高い空間が、一企業の商業スペースに変わってしまう」「デモなどの表現の自由や野宿を余儀なくされた人たちの生活の場が一方的に奪われる」などとして、区に計画の公開や説明を求めている。
「区が出すお金は1円もなく、みんながWin-Win」
こうした反発に対し、伊藤区議は「ホームレスの方に区もただ『出て行け』と言っているわけではない。ホームレスの人は現在行っている都の自立支援事業を利用してもらいたい。結果的に区民にとっていい公園にしたい」と説明。「企業論理が優先されていいのか」という指摘に対しては、
「企業だから悪いということはない。(ナイキが出資することで)今回の改修事業で区が出すお金は1円もないわけで、みんながWin-Winになる。区民が望むスポーツ施設を備えた公園になるはずだ」
と話している。
一方、「守る会」メンバーの黒岩大助さんは、「区民や野宿者との話し合いがないままトップダウンで話が決まってしまっている」と計画の不透明性を指摘。
「制度上の不十分さもあって、生活保護や自立支援事業を活用しても、公園に戻らざるを得ない人も多くいる。(家賃を補助する)地域生活移行支援事業も2年の支援にとどまり、就労支援や失業対策も現状では不十分。こうした問題を解決しないで野宿者を追い出せば、事態は悪化する」
とホームレス支援が不十分であるうえ、「排除」が先行している、と憤る。