米シティグループが、日本の個人投資家向けに円建て外債(サムライ債)を発行して、3150億円を資金調達する。個人向けに3150億円もの規模のサムライ債が発行されるのは初めてとみられ、2008年9月10日から募集を開始した(9月29日まで)。サブプライム損失の傷が癒えない欧米金融機関にとって、手元資金の確保は緊急課題だ。シティは、「傘下の子会社に対する資金提供や資本拠出、子会社の借入金の返済や借り換えを含む、通常の事業目的に充てる」としている。
日本はサブプライムの影響小さく、低金利
シティグループが2008年度に発行する個人向けサムライ債は7月に続き2度目。そのときは総額1865億円で期間3年、利回り年2.66%だった。9月10日から募集がはじまったサムライ債は、100万円(100万円単位)から、グループ傘下の日興コーディアル証券などで買える。
期間3年で、利回り年3.22%は個人投資家には大きな魅力。たとえば、3年もの円定期(9月7日現在の預金金利0.50%)に300万円を預けても、受け取り利息(税引き前)は4万5000円にしかならないが、このサムライ債の利息受け取り総額(同)は28万9800円にもなる。 格付けでいえば、シティのAa3(ムーディーズ)は日本国債と変わらない。個人向け国債(5年固定)の利率は0.99%(税引き前)だから、比較にならない。
欧米金融機関の中でも米シティは日本で、「シティバンク銀行」が積極的にリテール業務を展開していることもあり、個人への知名度もある。売れ行きもよさそうだ。
シティにとって「年3.22%」の利回りは、決して高くない。米ドルに比べて円は、長く低金利が続いている。08年6月くらいからは、日本では景気後退懸念が強まり、円の長期金利が下がってきたため、円・ドルの長期金利の差はさらに拡大した。
サムライ債の発行まだまだ続く
サブプライム問題の打撃が大きい欧米の市場では多額の資金が調達しづらい状況が続いていて、シティにとってサムライ債はまさに「渡りに舟」だ。
「サムライ債」というと、投資経験の浅い個人投資家にはなじみが薄いが、株式ほどリスクは高くないし、富裕層向けの投資商品は品揃えが手薄なだけに、期待は高まる。
日興コーディアル証券が4月から取り扱っている個人向けサムライ債は、豪州のコモンウエルズ銀行(4月と5月に400億円ずつ)とウェストパック・バンキング・コーポレーション(7月、216億円)、そしてシティと相次いでいる。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は「欧米金融機関は、日本の銀行ほど預金過多ではないので、資金調達の悩みを常に抱えている。いまの金利と為替水準をみると、まだまだ多くの金融機関がサムライ債の発行を考えているはず」と話している。