「三笠フーズ」騙しのテクニック 酒メーカー「事故米」10倍以上で購入

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   米粉加工会社「三笠フーズ」(大阪市北区)と関連会社が、残留農薬やカビ毒で汚染された「事故米」を食用として販売していた事件で、その「事故米」を酒造メーカーに対して仕入れ値の10倍以上の値段で販売し、巨額な利益を得ていたことがわかった。ある日本酒メーカーは「国産の酒米を注文したのに、とんでもないことだ」と詐欺まがいの手口に憤る。こうした「三笠フーズ」の販売手口はどんなものだったのか。

「国産の酒米」を注文したらタイ産の「事故米」が来た

   農林水産省によれば、「事故米」は工業用糊、建設資材などの材料に限定して販売を許可。価格は購入業者の入札によって上下するが、1キロ10円以下で、通常のコメの15分の1ほどの価格という。「三笠フーズ」が食用として不正に販売したことが発覚したのは2008年9月5日。過去10年にわたりタイ、ベトナムなどから輸入された発がん性のあるカビ毒や、残留農薬が検出された「事故米」を正規のコメに混ぜ、食用の袋に詰め替え販売していた。農林水産省は08年9月9日、この汚染米を購入した酒造メーカー数社を発表した。

   これらの酒造メーカーはなぜ、「事故米」を購入することになったのか。値段が安いため、製造コストを下げるのが目的か、とも思われるが、実態は全く違っていた。

「国産の酒米(さかまい)を注文したんです。かれこれ『辰之巳』(三笠フーズのグループ会社)とは30年の付き合いになります。100%国産米である、との証明書も出させていました。それが、外国産が混ざっているだけで大問題なのに、まさか事故米が含まれていたとは」

と、九州の名酒として名高い「美少年」を製造する美少年酒造(熊本県城南町)はJ-CASTニュースにこう答えた。

   「辰之巳」とは長い付き合いだけに信用し、酒米の購入額も通常価格だっただけに2重にも3重にも裏切られた格好だ。同社は清酒1.8リットル瓶3万本の自主回収を発表。同約38万本分が在庫で残っていて、被害総額は1億円になりそうだという。それにしても、国産米と外国産米の見分けは付かなかったのか。

「酒米を破砕したものを仕入れています。そうなりますと国産と外国産の区別はつきません」

   「辰之巳」は、酒造メーカーの信頼を裏切り、盲点を突いて「事故米」を販売したことになる。

焼酎30万本分の自主回収で被害総額は4億円

   芋焼酎「薩摩宝山」を製造する西酒造(鹿児島県日置市)は、今回初めて「辰之巳」から仕入れた。焼酎の原料は芋だが、麹を作るために米が必要になる。年に何度か「辰之巳」の営業が同社を訪れるため、同社の存在は知っていて、今回の焼酎用のサンプル米を見せられたとき、

「とても綺麗なお米でしたので、見積もりを出していただきました。他の取引業者よりも安いということはなかったのですが、今回はこの米を使おうということになったんです」

と同社はJ-CASTニュースに説明した。その後納入されたのは「事故米」が入ったものだった。同社も出荷した1升瓶約30万本分の自主回収を発表。被害額は約4億円に上るという。

   「三笠フーズ」は08年9月9日、同社の全従業員を解雇し事業を大幅に縮小すると発表した。農林水産省はJ-CASTニュースの取材に対し、今回の事件は「三笠フーズ」が帳簿を2重にしていたり、関連会社を複雑に絡ませるなど「事故米」の販売隠しが周到に行われていた。また、同省は利益目的なことは明らかで、

「それも相当な利益を得ていたことが予想される」

と話している。

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