日本郵政グループの郵便事業会社が新年(2009年)用に発売する年賀はがきの枚数が発表され、08年の販売実績を上回る強気の営業方針が示された。当初発行枚数は39億5000万枚で、08年用の最終発行枚数40億2105万枚を1.8%下回るが、売れ残りを差し引いた実際の販売枚数36億260万枚を3億枚余り上回る目標数値になった。同社は「年賀はがきは全国の郵便局で売り切れなどあってはならず、例年売れ残りを覚悟で余裕をもった枚数を印刷している」と説明するが、年賀はがきの需要拡大は09年も望めそうにない。民営化したとはいえ、時代の流れを読み切れない日本郵政の体質が浮かび上がった。
Eメールの普及ととともに販売枚数が減少傾向
日本郵政は民営化後、初の新年を迎えた08年用の年賀はがきの発行枚数を前年比5.8%増の40億2105万枚と4年ぶりに拡大したが、実際には約4億枚が売れ残り、販売枚数は前年比0.2%減少した。日本郵政公社時代の07年の売れ残りは約1億8000万枚で、大幅な「売れ残り増」となった。
年賀はがきは、Eメールの普及ととともに販売枚数が減少傾向にある。日本郵政は民営化の成果をあげようと、08年用年賀はがきに「ディズニーキャラクター年賀」など新商品を投じたほか、前年の2倍に当たる約80億円の広告費を投じたが、目標の40億枚を大きく下回る結果になった。08年1月の会見で、西川善文社長は「販売戦略に反省すべきところがあった」と、誤算を認めざるを得なかった。
09年も年賀はがきを取り巻く環境が大きく変わるとは考えにくい。日本郵政は09年用の新商品として、「梅とウグイス」「矢絣(やがすり)とはねつき」という日本伝統の題材をモチーフに、ウグイス色と桃色に着色した2種類の「いろどり年賀」を1500万枚発行する程度で、新たな新機軸や拡大戦略もうかがえない。08年に初めて発行し、人気を呼んだ「ディズニーキャラクター年賀」は、09年用に「くまのプーさん」を用いた商品を発行。地球温暖化防止のため、販売価格の一部を寄付金として途上国支援に充てる「カーボンオフセット年賀」も08年に引き続き発行するといった、前年踏襲のメニューが並ぶ程度だ。
再生利用には費用負担も必要
「郵便局に年賀はがきを買いに行ったら、売り切れだった」という「最悪の事態」を避けるため、売れ残りを覚悟で多めに年賀はがきを発行するのが、旧郵政省時代からの「古き良き伝統」らしい。売れ残った年賀はがきは段ボールなど再生紙として利用するが、再生利用には日本郵政の費用負担も必要という。すべてが前年並みと仮定すると、09年も年賀はがきは4億枚程度の売れ残りが予想されるが、果たして、これが民営化2年目となる日本郵政の「民営感覚」なのだろうか。