米国のベンチャー企業でテレビメーカーのビジオ(VIZIO)が日本に上陸し、42型液晶テレビを9万8000円の破格の値段で販売をはじめた。2008年9月3日に札幌市、4日からは神奈川県川崎市などコストコホールセールジャパンの8か店で発売していて、その売れ行きにコストコは「予想以上」と驚いている。ビジオは本拠地の米国でも低価格テレビを売りものに、急激にシェアを伸ばしてきた。日本でもその勢いは衰えていないようだ。
北米のシェアは、韓国サムソン電子に次いで第2位
テレビメーカーとしては、日本ではまだ聞きなれない「ビジオ(VIZIO)」だが、北米のシェアは2007年第3四半期で10.2%と、韓国サムソン電子に次いで第2位(市場調査のディスプレイサーチ調べ)。安価な42型と47型の液晶テレビを武器に売上げを伸ばしてきた。2006年の売上げが約7億ドル、それが07年には約20億ドルになった。
たしかに、42型液晶テレビが10万円を割った価格で買えるのは魅力的。しかし、日本では認知度の低いメーカーだったり、「安かろう、悪かろう」の印象があったりと、消費者は安いだけでは直ぐに飛びつかない傾向にある。
ところが、いま日本で唯一「ビジオ」の液晶テレビを販売しているコストコホールセールは、「われわれが予想していた以上に、大変売れ行きがいい」と話す。
2011年7月24日には地上デジタル放送への完全移行を控えていることもあって、低価格テレビの需要は高まりつつある。ビックカメラの売れ筋ランキングにある42型液晶テレビの最安値は17万4270円(東芝「REGZA 42ZV500」)。ユニデン製は16万9800円、HYUNDAI製は12万円で、さすがに10万円を割り込む製品はない。人気の高いシャープのAQUOSシリーズは20万円台だ。
国内メーカーの液晶テレビの価格も下がりはじめたとはいえ、さすがに9万8000円の値段は付けられない。ビジオが他社製品を価格で圧倒している。
国内メーカーも値下げ競争強いられる?
ビジオが低価格で提供できる理由は、徹底した外部調達にある。日本の大手メーカーのような自前の工場をもたず、物件費や人件費がかからない。企画、設計から開発、製造に至るまでコストを抑え、その分の値下げを可能にしたわけだ。
製造委託先が台湾や中国企業というと、日本人はなおさら品質を疑うが、ある家電量販店は「ビジオの画質は悪くないと聞いています。そうでなければ、米国でも売れていないと思います」と話す。
ビジオは米国内でもコストコホールセールを通じて販売して火がつき、家電量販店に取り扱いが広がった。日本でもまずコストコで、450台を限定的に「試験販売」し、その後様子を見ながら拡大を検討していく。
日本で爆発的に売れるかは未知数だが、当て込んでいた北京五輪の特需が伸び悩むなかで家電量販店では巻き返しへの期待が高まる。前出の家電量販店は、「(価格は)安いほうに引っ張られますから、メーカーが安値競争にでもなれば動き出すでしょう」という。
一方、シャープやソニーといった国内家電メーカーにとってはこれまで以上の「価格破壊」が求められる事態も予想されそうだ。