「司法修習」で落第する人の信じられないレベル
例えば、07年7月には、最高裁が、法科大学院の1期生で、司法試験に合格した後の「司法修習」で落第してしまった「不可答案」の概要を発表。例えば飼い猫を有償で預かる契約で、
「猫を生きたまま返すことまで含まれておらず、死なせても返還義務を果たさなかったことにならない」
といった、素人でも「おかしい」と感じるレベルの回答が続出しており、最高裁では、
「答案全体として、実務法曹として求められる最低限の能力を習得していない」
と、強く批判している。この試験は、法科大学院修了者と旧司法試験からの再受験組あわせて1515人が受験したが、そのうち76人(7.2%)が落第している。
こんな状況を受けて、日本弁護士連合会(日弁連)は2008年7月18日、「数値目標のみを追求することは、法的基本知識が不十分な法曹を出現させることになりかねない」と、3000人計画の「ペースダウン」を求める緊急提言を発表した。
町村信孝官房長官は、この提言を
「司法制度改革に携わってきた立場をかなぐり捨て、急にそういうことを言い出すのは、日弁連の見識を疑いますね」
と切り捨てたが(日弁連側は『弁護士の数を増やすこと自体には反対していない』と反論)、08年8月の内閣改造で就任したばかりの保岡興治法相は、「3000人計画」の方針は堅持しつつも、就任早々
「教育能力が伴わない法科大学院は、ほかのところと合併するか、整理されてしかるべき」
と発言。大幅な再編に含みを持たせた。
一方、日弁連法曹養成対策室長の井上裕明弁護士は、
「新司法試験の問題は、マークシート方式の『短答式』と『論文式』で構成されているのですが、論文試験については、実務家の当事者の立場に立って考えされる『良問』だといわれています。ところが、実務家からは『受験者は、問題作成者が想定している以上に、短答式の方を気にしすぎているのでは』という声が聞こえてきます」
と、法科大学院のカリキュラムがテクニック偏重になっている可能性があると指摘。日弁連では、08年9月3日に、「法律実務家の観点から、共通の到達目標を設定することが必要」との提言を発表している。
08年9月11日には、3度目の新司法試験合格発表が控えている。この結果を踏まえて、各地の法科大学院の定員やカリキュラムについての議論が加速しそうだ。