学力テストの結果を公表しようとしない市町村教委を、大阪府の橋下徹知事が、「クソ教育委員会」などと罵倒したうえで、予算制裁を示唆している。市町村教委が消極的なのは、「下から何番目とかなれば、子どもたちもそれとイコールとみなされる危惧があります」(泉佐野市)という理由だ。
学力テストの数字を発表すべきだ、という橋下知事
「クソ教育委員会」などと発言した橋下徹知事
あまりの怒りに、橋下徹知事がテレビのコメンテーター時代の顔に戻った。大阪府箕面市内で2008年9月7日に行われた「みのおエフエム」の公開生放送でのことだ。
橋下知事は、集まった府民ら100人余を前に、府内の市町村教委が全国学力テストの平均正答率の数字を発表すべきだと訴えた。そして、新聞各紙によると、大きな拍手を受け、こう放言したというのだ。
「クソ教育委員会が、みんな『発表しない』と言うんです」
知事は、08年のテストで大阪府の小・中学校が全国でそれぞれ41、45位と低迷したのに、「このザマは何なんだ」と激怒していた。そして、結果を市町村教委が公表すべき根拠について、そうしないと教委が甘えてしまうことと、数字の方が府民に分かりやすいことを挙げる。さらに、返す刀で、公表しない市町村教委には、09年度に35人学級の予算などを付けないと、制裁をちらつかせるまでした。
ネット上では、こうした発言でも支持の声が強い。府教委でも、半数以上の市町村教委がテスト結果について地域住民に何らかの説明をしていないとして、9月10日にそうするよう要請することにした。
ただ、市町村教委に平均正答率の数字を出すよう要請するかについて、府教委の小中学校課では、J-CASTニュースの取材に対し、「検討中」と言葉を濁す。一方、橋下知事が予算制裁を示唆したことについては、「真意をお伺いしたうえで対応する」と述べるに留まったが、その発言には疑問を呈したのだ。
「公表拒否が原因で、大阪府が市町村に不利益な扱いをすれば、おそらく地方自治法上、問題が出てくると思います」
下から何番目となれば、子どもも同じレベルとみなされる?
地方自治法の第247条3項では、都道府県は、市町村に対し、助言などに従わなかったことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないと定めてある。とはいえ、橋下知事の発言が実行された場合について、総務省行政課では、「この条項が、予算まで含むかは微妙です。違法と言えるかは難しく、何とも言えません」と言う。
学力テストの実施要領では、都道府県教委は市町村の結果を公表しないことになっている。一覧化すれば序列化、過度の競争を招く恐れがあるというのが理由だ。しかし、市町村が自主的に公表するのは自由になっている。橋下発言に従って、学力テスト結果の数字を公表する市町村は出てくるのか。
市長が結果を公表すべきと述べた大阪市と箕面市。大阪市教委では、「市長は私見を述べただけで要請は受けておらず、現時点では公表は考えていません。府の説明を詳しく聞き、内部で議論して判断したい」と述べる。箕面市教委では、「市長から要請があったのは事実。府の見解とともに検討、協議します。公表するかどうかは五分五分」としている。
もっとも、公表を渋る市教委などがいくつかあると報じられている。
泉佐野市教委の学校教育課長は、J-CASTニュースの取材に対し、「数字の公表は考えていません」と断言した。
「数字が一人歩きし、例えば、下から何番目とかなれば、子どもたちもそれとイコールとみなされる危惧があります。40数年前にテストがいったんなくなったのは、そういう苦い経験があるからです」
橋下知事の発言については、「行政の最高の方が、予算を付けないという手法を採ることが本当にええのかなという思いがあります。(『クソ教育委員会』については)公人としての発言としてええのかな、子どもたちも『知事が言っている』としてそんな言葉を使ってしまいます」と反発している。
ただ、府教委の要請があれば、テスト結果について、「このあたりに課題」などと言葉の表現で説明したいという。