原油価格の高騰がフェリー業界に大打撃を与えている。世界最大級の高速フェリーを導入した東日本フェリーがフェリー運航事業から撤退することが明らかになったほか、大阪中心のフェリー団体が非常事態宣言を出し、政府の支援策を期待するなど、業界をめぐる状況は深刻だ。
青森-函館、函館-大間、室蘭-青森から撤退
東日本フェリーの「ナッチャンWorld」も運休の見通し
東日本フェリーが、青森-函館、函館-大間、室蘭-青森の3航路のフェリー運航事業から撤退することが2008年9月5日までに明らかになった。07年9月に就航した世界最大級の高速フェリー「ナッチャンRera(レラ)」、08年5月に就航したばかりの同型の「ナッチャンWorld(ワールド)」も08年10月末で運休にする見通しだ。
同社営業本部はJ-CASTニュースに対し「(08年9月)8日に会見があり、コメントできない」と述べるが、9月8日に撤退についての正式発表が予定されている。また、青森県によれば、同社の古閑信二社長が08年9月4日に県庁を訪れ、三村申吾知事に3航路からの撤退を口頭で説明したという。
東日本フェリーは08年度の赤字を見込んでいる。同社営業本部によれば、高速船の導入によって利用客数は増加したが、昨今の原油価格の高騰が同社の業績を直撃した。
「(赤字の原因は)第一に原油高。利用客数についても、当初想定していた山に比べれば低い山で、高速道路など全国的な流れと同じで、(客足は)鈍っている」(営業本部担当者)
フェリーにとってはいろいろな意味で燃料高は痛い。トラック運送業者などのドライバーが主要客という事情もある。燃料費高騰による顧客離れに加え、フェリーそのものの燃料費も業績を圧迫している。その一方で、運賃を値上げすれば、客離れにさらに拍車をかける可能性もある。東日本フェリーは2008年9月1日に、燃料費の値上がりを受けて旅客と車両の運賃を3割値上げしたが、これも「事業基盤を圧迫する極めて深刻な状況」(同社)だったからだ。
漁船に対しては、政府は支援するするのに…
一方、6船社が加盟する大阪フェリー協会は2008年9月4日、コストダウンは限界だとして、緊急事態宣言を発表した。同協会によれば、フェリーの燃料油の価格は04年と比べると3倍ほどまで跳ね上がり、総営業費用に占める燃料費の割合は、以前の1~3割から現在では3~5割にまで高まっているという。また、同協会は陸上輸送業界に対して高速道路のETC割引などの支援策が検討されているのに対し、政府で海上輸送業界に対しての支援策が検討されていない現状に不満を示している。
協会事務局の担当者はJ-CASTニュースに対し、
「漁船に対しては、政府は支援する方針ですが、海上輸送業界にはフェリーなどその他の船団がたくさんあります。環境の面で、政府はフェリーや貨物船でクルマを輸送する『モーダルシフト』を進めようとしていますが、このままではフェリーから自動車輸送にシフトする『逆モーダルシフト』が起こりかねません。国交省は道路に対しては敏感ですが、海運業には何もおっしゃらない」
と話す。同協会によれば、赤字に陥るフェリー船社が今年度相次ぐ見通しという。