韓国ウォン安が深刻化している。外為市場の関係者によると、韓国通貨当局は米ドル売りウォン買いの市場介入を「断続的に行っている」ようだ。それによって、2008年9月5日のウォンは1米ドル1117.8ウォンで、前日に引き続き上昇した。政府のドル売り介入の報道をきっかけに反転上昇しはじめたが、ロイター通信などによると、韓国内では1997年のアジア通貨危機を思い起こさせる、「9月金融危機説」までも飛び出し、政府は外資の国内封じ込めに懸命という。
3日には年初来18.9%も下落
2008年9月4日のウォンは5日ぶりに反発し、1米ドル1128.6ウォンをつけたが、前日(3日)の終値は1148.5ウォン、一時は1米ドル1157.35ウォンまで下がった。ブルーンバーグによると、ここ数日で最も下がった9月3日時点で、ウォンは年初来で18.9%も下落。1997年のアジア通貨危機を思い起こさせた。
ウォンが急落している原因は、韓国の政情不安と景気悪化がある。原油価格が高騰するなかで世界的な米ドル安に見舞われていたが、原油が1バレル110米ドルを割り込むなど急落してきたことで、米国景気が回復するとの見方が広がった。それにつれて米ドルが上昇したことがある。
外国為替に詳しい、あるFX関係者は「世界的な景気悪化のなかで、当初は米ドルだけが下がっていて、ユーロや豪州、アジアなどは比較的よかった。潮目が変わって、どこもかしこも悪くなって米ドルが浮いてきたという感じ。韓国の場合はこれに政情不安がのしかかった」と、ウォン急落の原因を説明する。
1997年のアジア通貨危機ほどではないにしろ、韓国では外国資本が国外に逃げていく「資本逃避」が起こっていて、「外国人投資家らが韓国経済に見切りをつけてウォン建て資産の売却を急いだ」(FX関係者)という。韓国では大量の国債が近く償還期限を迎えることから、市場から資金流出が加速するとの懸念が広がってもいる。
韓国メディアによると、韓国通貨当局は「過度な偏り現象などで為替相場が急激に変動する場合には、これを緩和するために努力する」としており、外資繋ぎとめのためには積極的な市場介入もいとわない姿勢だ。当局幹部も「危機説のウワサがまちがいであることがわかれば、ウォンは急上昇する」と、火消しに躍起なようすを伝えている。
それでも、三菱東京UFJ銀行は「ウォン安はしばらく続きそう」とみている。
ドル資本が逃げていくほうがもっと深刻
とにかく、いまの韓国政府は為替の安定化に懸命。ドル売りウォン買いの市場介入は活発だ。しかも、「保有しているドルを売るのではなくて、まず対円でドルを買って、買ったドルでウォンを買う、あるいは対ユーロでドルを買って、買ったドルでウォンを買うといった、為替を使ったオペレーションをやっている」(NTTスマートトレード)といい、関係者の間でこれが話題だという。
「対ユーロでドルを買う動きは、ユーロが強すぎるので世界的に強調して抑えていこうという動きにそったものといえるが、対円でドルを買う理由はよくわからない」ただ、それが巡りめぐってドル需要を支えているともいわれている。
ウォン安が進むことで、韓国の輸出企業の海外での競争力は高まるし、外貨収入は膨らむ。たとえば、「韓国はかつて造船の竣工量で日本を抜いてトップなったときがあって、そのときもウォン安だった」(岡三証券のアナリスト、宮本好久氏)と、必ずしもマイナス面ばかりではない。
三菱東京UFJ銀行は「今回のウォン安で、輸出産業で競合している一部の日本企業への影響が懸念されている」と話すが、韓国政府としてはウォン安の効果を享受するよりも、ドル資本が逃げていくほうがもっと深刻というわけだ。