柔道金メダリストの石井慧選手が、その面白キャラを爆発させている。あまりの脱線ぶりに、テレビ露出を控えるようお達しが出たとの報道もあるほどだ。が、そんな石井選手は、意外にも、子ども時代はおとなしく、人見知りだったというのだ。
「オーバーワークという暴挙が奇跡を起こす」
「首相と握手して、うすうすこうなると感じていた」
またまた石井慧選手(21)から、ブットビ発言が飛び出した。北京五輪の男子100キロ超級での金メダルを報告するため、在学中の国士舘大学で若林克彦学長と2008年9月2日に面会したときのことだ。若林学長とも握手した石井選手は、返す刀で、「テレビカメラの前で震えていたので、これじゃやられるぞ」と学長をも斬ってみせた。
これには、付き添った同大柔道部の山内直人監督も、「頼むから止めて」と顔をしかめたほどだ。それでも、ロック歌手のDAIGOのポーズを取ってみたり、アントニオ猪木さんの「ダー」を学長と披露したりするなど、ノリノリだった。
石井選手の大胆不敵な言動は、金メダル獲得後、にわかに脚光を浴びた。いわく、「(男子代表監督の)斉藤先生のプレッシャーに比べたら、屁のつっぱりにもなりません」「遊びたいです、いや、練習したいです」。
それが逆鱗に触れたのか、全日本柔道連盟がテレビ露出などを控えるよう命じたと報じられ、しばらく姿を見せなかった。しかし、8月26日の日本選手団解団式で報道陣の前に再び現れてから、「絶口調」なのだ。そのときも、尊敬する格闘家の小川直也さんの道場にメダルを寄贈したい、モハメド・アリが金メダルを川に投げ捨てたようにレプリカを捨ててもいいと言い出し、あっと言わせた。
こうした言動は、06年4月に最年少で全日本選手権を制して、金メダルが見えてきたころからのようだ。「石井語録」をまとめてみると、
「俺が本気で腹筋に力を入れたら、相手は諦めた方がいい」(07年12月)
「『木綿の石井』と言われるくらいに頑張りたい」(08年2月)
「僕が休むのは死ぬときです」(8月26日)
「オーバーワークという暴挙が奇跡を起こす」(8月30日、NHKスペシャル)
奔放な発言は、自らのおとなしさを戒め、奮い立たせるため?
ネット上では、こうした石井選手の言動について、格闘漫画の影響ではないかとの見方が出ている。
男性のブログ「WACK WACK MMA ISLAND」では、人気漫画「キン肉マン」「グラップラー刃牙」「餓狼伝」に同じようなフレーズがあると指摘。「『屁のつっぱり』発言に限らず石井選手の数々の発言には、マンガヲタクである僕のアンテナにびりびりくるものが数多くある」と漏らしている。
すると、石井選手は、普段から格闘技や漫画の影響を受けて、オモシロ発言を連発していたのだろうか。
高校1年まで石井選手が柔道を習った修道館クラブ(大阪)の上田順治会長は、意外なことを明かす。
「子どものころは、無口でおとなしく、人見知りだったんですよ。五輪前の壮行会で、『飛ぶ鳥を落す勢いの石井です』とあいさつして、みんなびっくりしました。慧がようしゃべるようになったと。一人で東京に行ってもまれたんじゃないですか」
石井選手が、格闘漫画を読んでいるのは、見たことも聞いたこともなかったという。
出身の清風中学・高校柔道部の魚澄豊治監督も、同様な感想だ。ただ、「格闘家の秋山成勲もうちの卒業生で、顔出しして石井に稽古をつけていました。その影響があるかもしれませんね」と話す。
石井選手が、奔放な発言を繰り返したのは、自らのおとなしさを戒め、奮い立たせるためだったのだろう。たくましくなった石井選手は、欧米流のポイントを稼ぐ「JUDO」も積極的に取り入れ、見事、金メダルを獲得した。
修道館クラブの上田会長は、「勝つ柔道と言っても、力がないと難しいんです。昨年夏に慧と飲んだとき、『8時間練習している』と言っていました。それだけ練習して、負けない柔道をしたということだと思います」と話している。