日本にとってチャンスはある
―― 1970年代のオイルショックのとき、日本は高度な省エネ技術を得ました。いまの原油高騰がもたらすものは何なのでしょうか。
山内 1970年代のオイルショックのスタディ(経験)で得られたものはいくつかあります。産油国、資源国との付き合いの重要性を学んだこと、また高度な省エネ技術を身につけたことで、結果的に原油価格を下がったことなどです。
いまの原油高も、日本にとって、よりクリーンなエネルギーを生み出すためのチャンスといえなくもありません。あるいは、エネルギー消費のより一層の省エネ化に向けて利用方法の本質的な転換を図ることを考える時代になったというべきかもしれません。
われわれは当面、ある程度高い原油を受け入れざるを得ないでしょう。しかし、もう一段の省エネ型のビジネスやサービスのあり方、エネルギー効率の向上に何が必要かを考え、そうした活動を支えるインフラへの転換を図る。それを海外に持って行って貢献する。こういった流れをつくり出すことで価格上昇分を取り戻す、産業のたくましさが望まれます。
―― エネルギーを受け取り消費するユーザー側にできることはありますか。
山内 欧米ではここ2、3年のあいだに、「スマートメーター」という電力計器(ガスまたは水道もある)をゲートウエイにした需要側の負荷管理や、これとリンクしたデマンド・レスポンスと呼ばれる料金システムなどを盛んに実施しています。昼間の電気代を高めに設定して利用を抑えるといった料金設定で、たとえば需要を抑えるために、どのくらい電気を使ったのか、あるいは電気をどのくらい送ればいいのかを、メーターを介してすぐにわかるような、双方向のIT技術を使った仕組みです。いわば、ムダを省くために消費者にインセンティブを与えて需要をコントロールするわけです。日本ではこれまでの機械式メーターを電子式メーターに取り替えていく必要があるため、本格的な展開はまだむずかしいようですが、将来は普及する可能性があります。いまは節電など、できることを地道にやっていくことですが、こうしたインフラ形成への関心を利用者が強くもつこともまた重要ではないかと思います。
山内 朗(やまのうち あきら)
野村総合研究所 事業戦略コンサルティング一部 上級コンサルタント
1963年生まれ、東京都出身。東北大学大学院工学研究科修士修了。
専門は資源・エネルギー分野の事業戦略。エネルギー資源開発、国内外の電力・ガスなどユーティリティ業界の規制緩和、業界再編研究、エネルギー業界各社の事業戦略、事業開発等、多数のプロジェクトを手がけている。