枝川二郎の「マネーの虎」
続 原油価格の高騰は「投機」が原因ではない!

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原油ブローカーは「値下がり」で利益を得ようとしていた

   (5)では、先物市場は将来の原油価格の傾向をどう予測してきただろうか?

仮にいまの価格よりも1年期日の先物価格のほうが高く、さらに2年期日の先物はもっと高い、というような状況であるとすれば、原油価格が将来上がっていくという市場のコンセンサスがあると考えられる。逆もまた真である。

   実際はどうだったか。アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)が2008年7月に公表した中間報告によると、過去4年間は期先になるほど先物価格が低くなるという状況がほぼ恒常的に続いていた。つまり、原油価格が将来下がっていくと予測されていたわけだ。

   (6)今般、最も悪者にされているのが商品ファンド。原油などの先物を投資対象とする商品ファンドへの資金流入が原油価格の高騰につながった可能性が指摘されている。しかし、商品ファンドの取り次ぎをしているスワップ・ディーラー(ブローカー)について、前述のCFTCレポートはこう書いている。

「2008年の最初の5か月間、スワップ・ディーラーのポジションはネットでショート(売り持ち)だった。つまり、彼らは原油価格が下落することで利益を得る立場にいた。」

世の中では意外な因果関係が存在する可能性があるので、先物投機が原油価格にまったく影響しないとは言い切れないが、少なくとも主な原因でないことは明らかだろう。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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